『ノート指導の技術』 [書籍]
上條晴夫さんは『子どものやる気をひきだすノート指導』(学事出版)において、ノート指導の出発点を「授業感想文からスタートする」としています。授業感想文の先行文献の一つとして、有田和正さんの本書を挙げています。
本書の「まえがき」は次の一文から書き始められています。
「ノートは思考の作戦基地である」という認識に達するまでには、だいぶ時間がかかった。
「思考は、個性的」だから、「思考の作戦基地としてのノートも、おのずから個性的」になるはずで、「個性的でないものはノートとはいえない」ため、「個性的なノートをつくらせる技術」について本書をまとめたと、有田さんは述べています。そして、「授業の導入」「展開時」「まとめ・発展」それぞれにおけるノート指導の技術が紹介されています。
その中で、「まとめ時に書くこと三つ」が次のように書かれています。
(1)本時で学習した内容の整理
・大切なことを赤線で囲んだり、線を引いたり、丸印をつけたり、線でつないだりする。
(2)▲印などをつけて、本時の学習に対する自分の考え(感想・疑問・反論など)を書く。
・短い文でよいから本音を書く。
(3)新しく発生した問題
・これを明らかにし、書いておくと家での学習にも役立つし、間を生かすことにも役立つ。
この「まとめ」に書くノートに対して、上條さんは授業感想文として考察を行っています。上條さんは「板書を写すだけでなく、子どもが自分の言葉でノートをするのは(2)の『本時の学習に対する自分の考え(▲)』だけ」として、「感想・疑問・反論」に着目しています。
「▲」のような印を付けて書かせることにより、子どもにも「個性的なノート」を意識させるように促していると思われます。各教科の学習において「▲」のような内容をいかに書くか、つまり「授業感想文」の書き方についての検討が〈書くことによる教育〉の手がかりになりそうです。
なお、本書をもとにして、有田さんが「新しいノート指導のあり方をまとめたもの」として『新・ノート指導の技術』(明治図書)も刊行されています。
まえがき
Ⅰ ノートは思考の作戦基地
一 「ノート」と何か
・授業「ノートとは何か」
・授業直後のノートから
・「はてな?」帳から
二 書くことを楽しむ
・書くことを楽しませる
・日付けで書く意欲を高める
・内容の面白さ
・板書の工夫
三 書いて考えを創り出す
・聞きながら書く
・作文の評価を書く
・書きながら考える
・三つの作業を一度に
・面白さを引き出す
四 ノートの機能
・記録ノー卜
・練習ノート
・思考を深めるノート
・授業を授業の間を生かすノート
Ⅱ 授業の展開とノート
一 授業の導入とノート
・導入時に書くこと三つ
・問題をはっきりさせる
二 展開時のノート
・展開時に書くこと三つ
・思考の変化を書く
・ノートする時間
三 まとめ・発展とノート
・まとめ時に書くこと三つ
・▲マークを書く時間
・どんな▲マークを書かせるか
四 ノートの点検のしかた
・点検のしかたで書き方が変わる
・点検の視点
・点検の時間
五 授業を発展させるノート
・授業時間だけが授業ではない
・授業後の追究
Ⅲ 板書とノート
一 板書の機能とノート
・板書はクイズではない
・板書とは何か
・書く意欲を高める板書
・板書の書き方
二 力をつけるノート指導
・ノートは自分の財産だ
・個性的なノートづくり
・聞きながらノートする
・ノートは発言の玉手箱
三 ノートしない子、しすぎる子
・ノートしない子の指導
・ノートしすぎる子の指導
Ⅳ ノートは成長の足跡
一 ある母親の証言
・驚いたこと
・書くことっていいですね
・ノートを見るのが楽しみです
・これは面白い
・うちの子は書くのが苦手です
二 子どもの成長を示すノート
・「はてな?」帳をもたせる
・「はてな?」帳で成長がわかる
・面白さ倍増コメント
・有田先生の日本史
Ⅴ わたしのノート観
・ノートは記録帳(徳田裕輔)
・ノートは授業記録(鈴木彩)
・ノートは意見のカンヅメ(福島亜矢子)
・ノートは個性のあらわれ(荻野浩次郎)
・ノートは成長の足跡(小川英里)
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