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『作文指導系統案集成』 [書籍]


作文指導系統案集成 (1964年)

作文指導系統案集成 (1964年)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 百合出版
  • 発売日: 1964
  • メディア: -


大内善一さんは『作文授業づくりの到達点と課題』の「まえがき」において、「作文授業における研究を組織的に行ってきた『日本作文の会』『児童言語研究会』『文芸教育研究協議会』における実践については、先に公にした『思考を鍛える作文授業づくり』の中で検討を加えている」と述べています。そこで、これらの団体の主要な著作を概観していくことにします。

まずは、「日本作文の会」です。先の「まえがき」には「日本作文の会」による大内さんの作文授業づくりについての批判、および大内さんによる反批判の存在が触れられています。これらも意識していくことにします。

『思考を鍛える作文授業づくり』において、大内さんは次のように述べています。

 「日本作文の会」の場合、児童・生徒の作品を教材として使用するという姿勢が重視されている。この点に指導者が子供の思考過程に即する契機が保障されている。
 特に、「参考作品集」を用意するために、「子どもたちの作品をたんねんに読むこと」が求められ、「全体としてすぐれたものでなくても、部分的にすぐれたものは大いに利用すべき」であるとされている。
 子供の書いた作品から日常的に教材としての「参考作品」を掘り起こしていこうとすることで、子供の思考の実態に即することが可能となる。

このように「子供の思考」を重視するために行われている日常的指導が、「鑑賞・批評」「文集」であると大内さんは指摘しています。

「鑑賞・批評」とは、どのような指導か、本書『作文指導系統案集成』の「文章表現指導の『系統』とはなにか」で示されている「文章表現各過程に即する指導」を引用します。

(イ) まず表現以前の指導では、まわりの事物をこまかく観察したり、思考したりして、生活者としての興味や関心をたえずいだくようにすること。
(ロ) 表現意欲の喚起・取材の指導では、文章表現することのよろこびや意味を知り、積極的に、自分の体験や思考を、ひとまとまりの文章にまとめようという意欲をよびおこしながら、なにを書いたらよいかを自らさがしだすようにすることである。そして、しだいにネウチある題材をえらんでいくようにしむけていく。
(ハ) 構想の指導では、どのようにひとまとまりの文章としてまとめていくか、その組み立てをどのようにしたらよいかをきめさせることである。
(ニ) 記述の指導では、どのように表現していくことがよいかをわからせていく。そのためには、文字、単語、文、文章についてすでに身についている知識や能力を生かしながら、だれにでもわかるような、しかも効果的な文章を、どのように書きあらわしたらよいかを、具体的な表現のなかで指導することである。
(ホ) 推考の指導では、書きおえたものを読みかえしながら、あやまりや不充分なところを訂正したり補足していくための指導である。
(ヘ) 鑑賞批評の指導では、個別的・集団的にひとつの作品を読む場合、内容・形式についての吟味のし方、観点のおきどころなどについての指導である。

一連のサイクルの最後に位置する「個別的・集団的にひとつの作品を読む」場面において行われる指導が「鑑賞・批評」と言えるでしょう。「文集」も含めて「最後」であることに注目しておきます。

この「鑑賞・批評」を論点の一つとして、田倉圭市さんは「新学力観と生活綴方—大内氏の『みたこと作文徹底研究』批判—」(『作文と教育』1996年1月号)を書いています。田倉さんは「『見たこと作文』で、一つの題材から追究する問題・テーマ(新たな『題材』『ハテナ』)が次々と生まれ、追究が広がりと深まりを持ってくるのは、書かれた作品をみんなで発表しあい、読み合うから」と言います。そして、「大内氏の批判する過去のことを思い出して書く『したこと作文』でも、『鑑賞・批評』の指導の段階になると、大内氏のいう問題・テーマに関する追究も行なわれるし、同じ問題・テーマを書きつづけていく連続性もうまれてくる」と主張しています。

一方、大内さんは「『見たこと作文』をめぐる疑問・批判にお答えする」(『授業づくりネットワーク』1996年4月号)において、「上條晴夫氏の『見たこと作文』における『「ハテナ」づくり』の方法も『日本作文の会』の『鑑賞・批評』の指導過程からヒントを得たものではないか」と言います。けれども、「上條氏がヒントを得たのは、田倉氏のいう『学級で読み合う』という方法」だけであり、「クラス全体で共通のテーマを追究し、その過程で生まれた『新たな問題・テーマ』をさらに全体で追究していくというシステムに転換した」ところが、「見たこと作文」の新しさであると主張しています。

こうしてみると、「鑑賞・批評」つまり「学級で読み合う」ことを、どの過程に位置づけるかが分かれ目のように思えます。「日本作文の会」の指導過程では、最後の段階で行われます。「学級で読み合う」のは、作品が出来上がった後のことからです。もちろん、「学級で読み合う」ことをきっかけに新たな作品が生まれることもあるでしょう。けれども、あくまでも作品あっての「学級で読み合う」活動です。大内さんが「日本作文の会」の「鑑賞・批評」を「作品主義」の方法と言っているのは、この点を差しているように思われます。

それに対して、「見たこと作文」においては、絶えず「学級で読み合う」活動が行われます。「子供が書いた作文を教師が毎日のように教室で『読み聞かせ』してやる」のです。(『「見たこと作文」の徹底研究』)「持続的な追究を生み出す指導技術」を駆使しながら、教師は子どもたちが作文を書き続けられるように働きかけているのです。

「学級で読み合う」という活動は、どのように行われるのか。作品完成後か完成前か。教師中心か子ども中心か。授業外か授業内か。それぞれ、どちらを選択するかによって、作文授業のタイプが違ってくるように思われます。「作文指導系統」における問題の一つとして、意識していきたいです。

まえがき
Ⅰ 作文指導の学年別系統案
  大阪綴方の会
Ⅱ 作文指導の系統試案
  釧路市教育研究所・釧路市作文サークル・釧路作文の会
Ⅲ 作文指導の系統案
  静岡・沼津作文の会
Ⅳ 文章表現指導系統案(中学)
  石川・小松作文の会
Ⅴ 小中学校 文章表現系統案
  東京・八南作文の会
Ⅵ 文章表現体系試案
  国分一太郎
Ⅶ 生活培育を新組織せる詩指導系統案
  吉田瑞穂・岩崎覚・国分一太郎・稲村謙一・磯長武雄・林義男・近藤益雄
Ⅷ わたしの描く綴方指導系統案
  国分一太郎
Ⅸ 綴り方指導要項
  文部省
Ⅹ 綴方の指導要項と学年的展開
  飯田恒作
ⅩⅠ 文章表現指導系統案のつくり方・使い方
   編集委員会
   A なぜ文章表現指導系統案が必要か
    1 文章表現指導とはなにか
    2 文章表現指導の「系統」とはなにか
    3 なぜ「系統案」が必要か
    4 系統化をすすめるうえの問題点
    5 「指導要項」と系統案
   B 文章表現指導系統案の見方・つくり方
    1 表現各過程の問題
    2 表現諸形体の問題
    3 戦前と戦後の系統案のちがい
    4 体系表と計画表
   C 文章表現指導系統案の使い方
    1 表現意欲・取材と系統案
    2 具体的実践過程での問題
    3 地域差・学校差と教科書との関係
    4 作品例について
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