SSブログ

『こんな時どう言い返す』 [書籍]


こんな時どう言い返す―ユーモアあふれる担任の言葉 (ネットワーク双書)

こんな時どう言い返す―ユーモアあふれる担任の言葉 (ネットワーク双書)

  • 作者: 池田 修
  • 出版社/メーカー: 学事出版
  • 発売日: 2005/11
  • メディア: 単行本


この本の著者、池田修さんは『教師になるということ』(ひまわり社)の中で、教師が「子どもとの距離を正しく保つ必要がある」と訴えて、次のように述べています。

『こんな時どう言い返す』(池田修 学事出版)は、その事例集です。子どもたちから投げかけられた質問に、教師は5秒以内に答えなければならないと私は考えています。そこで答えられないと、子どもたちは先生から許されたと勝手に思い込みます。「なんで、先生だけ学校でお茶を飲んでいるのですか。お菓子を食べているんですか。私たちも同じ人間です。食べて良いでしょ」と言われたら、さて、なんて言い返しますか。5秒以内に、子どもたちが納得する答えを述べてください。私の答えはこの本にあります。

その答えは、次のように示されています。

 君たちの親は働いているかい?
「はい」
 その職場の中で、お茶やお菓子は食べてはいけないと言うところはあるかな。
 いいか。私たちはここ学校に仕事をしに来ている。ここは職場なのだ。
 君たちの親が職場で寛いでいると同じように、自分たちで稼いだお金でお茶やお菓子を買って寛いでいるのだ。君たちのように遊びに来ているのとは違うのだ。

なるほどなぁと思います。私は小学校教師ですが、高学年を相手にしていると、この中学生と同じような場面があります。私の場合は、次のように対応していました。

『お菓子食べたいならあげようか?』
「先生、ホント?」
『その代わり、仕事もするんだぞ。「働かざる者食うべからず」だ』
「仕事って、何するんですか?」
『小学生の仕事は勉強に決まってるじゃないか。漢字? 計算? 何がいい?』
「何時までやればいいんですか?」
『勤務時間は5時までだ。でも5時で帰れることはないなあ。8時か9時か……でも、機械警備をセットする10時には必ず帰れるぞ。どうだ、一緒に勉強していくか?』
「遠慮しておきます!」

私も教師の「仕事」は強調しましたが、「親」の視点はありませんでした。他にも、池田さんの事例には、しばしば「親」が登場します。小学生よりも大人に近い中学生に対して、「親」の立場を意識させるのは効果があるように思われます。

このように、池田さんが「学校で実際に起きた生徒指導の場面で、どのように言い返してきたかの記録」が本書の中心です。「まえがき」には次のように書かれています。

 一つ一つの話は、次のような構成になっています。
 (1)生徒の問題場面の描写と生徒の発言
 (2)「さて、こんなときどう言い返しますか?」と読者のみなさんへの問いかけ
 (3)実際にどのように言い返したか、具体例の提示
 一つの話を一気に読まれても結構ですし、(2)のところで本を閉じて(私ならどう言い返すかな?)と考えてから、(3)以降を読むのも面白いと思います。

まさに、先ほど私が書いたような読み方です。以下の目次に示すように、たくさんの事例が紹介されています。ぜひ、楽しんでみてください。

はじめに
Part1・こんな時どう言い返す
 学習(勉強)に関わって
  先生、ずるいよ! 先ちょこもって
  宿題プリントもらっていません
  この答、間違っています
  辞書は使わないのですか?
  推薦の基準、昨年と違ってる!
  期末テスト、全くできなかった!
  発表をちゃかす生徒に向けて
  〇〇先生は何も教えてくれません
  期末試験は簡単な問題にして!
  講師の授業で騒ぐ生徒に
  教科書を持って読ませたら・・・
  答案の点数が見えてます!
 規律・マナーに関わって
  先生は俺を疑うのか
  スカート、短くないよ。ダメなの
  髪の毛を黒くしたら、急に伸びました
  インターネットするのいけないの?
  はい、もう居眠りしません
  昼休みだからいいじゃん
  家でもそうなんです
  その話、前にも聞きました
  遅刻を取り消して!
  バスの乗り方はどうするんですか?
  きれいな教室と呼ばれたい!
  これ、安いんですか?
  先生、鍵!
  チャイムの余韻はセーフ?
  生徒が学校で煙草を吸いますか?
  雨で体育着が乾かない
  これが普通です
  注意されたのに笑っている生徒に
  名表をいたずらされたとき
  バンドエイドのゴミを拾うとお祈りする
  名前、忘れました
  ちょっと怪我で訴えてくる生徒
  ちゃんと聞いてます
  反省の様子にない生徒
  なぜ遅刻をしてはいけないか
  価値観を押し付けないでください
  一列縦隊で歩く生徒に
 生き方などに関わって
  どうせ俺が悪いんです
  解答欄を間違えた!
  「ちゃんとそり!」で、ちゃんとする?
  どうして先生になったの?
  私に責任はありません
  先生に話しても解決しない!
  誰が税金泥棒?
  どうせ俺はバカだから・・・
  馬鹿を自慢する生徒に
  同じ人間じゃん
  指導の矛盾?
  うちの子どこに入れるのでしょうか?
  なんでオレばかり頼むの?
  頑張りました
  代わってあげられないこと
  先生は職員室でお茶を飲んでる
  オレが頑張ったって世の中は・・・
  好きな者同士がいい!〜席替え〜
  なんで私だけが怒られるの?
  わからないからやらない
  他人の間違いを許せない生徒
Part2・キーワードで語る生徒指導
  吾、学級開きで宣言す
  学級を耕す
  ためいきをホッとつかせる
  自分を思い知るとき
  心を尽くす
  生きるって言ってみろ!
  ひとりで生きているわけじゃない
  ずる、しない
  思い至る
  やっぱり。努力を重ねると・・・
  個性が溢れるとき
  信じ続けるのはしんどいけど・・・
<おまけ>
 保護者への説明 こんなとき、どう説明しますか
  学力低下が問題になっていますが、先生の学級は大丈夫でしょうか
  うちの子どもは勉強が遅れ気味ですが、大丈夫でしょうか
  先生の宿題は少ないので、もっと増やしてもらえませんか
  隣の学校では英会話をやっていますが、うちの学校ではやらないんですか
  学校でケンカしてケガをした子どもの親に、どう説明しますか
nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学校

nice! 0

コメント 2

池田修

二冊も紹介していただきまして。ありがとうございます。
しかし、丁寧な紹介を続けていますね。
これだけで一冊の本になりますね。

小書に関して言えば、この夏の講座は、この本に関するものばかりでした。ある方に、この本は類書がないと言われましたが、そうなのかもしれません。局面指導、場面指導の本はありますが、それは、「こんなときどうする?」であって、「どう言い返す」ではないんだそうです。

二冊目は理論編を書きたいと思いながら、まだその準備のところにいます。ありがとうございました。
by 池田修 (2009-09-13 09:38) 

佐内信之

池田さん、こんにちは。佐内です。

石川さんの『中1ギャップ』と同じく、夏集会前に紹介したかったです。でも、改めて本を読み直していると、いろいろ気づくことが出てきて面白いです。たとえば、『教師になるということ』の108ページに家本芳郎さんの『挑戦! 教育実践練習問題』が紹介されています。この本と『こんな時どう言い返す』の関係なども気になるところです。

『こんな時どう言い返す』の内容がネットワークの会員版に連載されていたころから、なんで池田さんはこんなことを思いつくんだろうと不思議に思っていました。理論編、楽しみにしていますね。
by 佐内信之 (2009-09-13 23:13) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。