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『子どものやる気をひきだすノート指導』 [書籍]


子どものやる気をひきだすノート指導 (ネットワーク双書)

子どものやる気をひきだすノート指導 (ネットワーク双書)

  • 作者: 上條 晴夫
  • 出版社/メーカー: 学事出版
  • 発売日: 1995/10
  • メディア: 単行本


大内善一さんは『作文授業づくりの到達点と課題』(東京書籍)の「まえがき」において、「作文授業づくりに関してのケース・スタディ」の作業を行う必要性を述べています。『思考を鍛える作文授業づくり』(明治図書)でも行われた検討作業を踏まえて、少し時代をさかのぼり、昭和四十年代以降の実践を取り上げています。

さて、大内さんは『作文授業づくりの到達点と課題』「第Ⅶ章 追究型の作文授業づくり」において「見たこと作文」を取り上げています。上條晴夫さんが『見たこと作文でふしぎ発見』(学事出版)において提案した実践です。この実践を取り上げる理由を、大内さんは次のように述べています。

 私は、この『見たこと作文でふしぎ発見』が刊行された時以来、この実践の優れた点を雑誌などを通して何度も紹介してきた。拙著『思考を鍛える作文授業づくり』(一九九四年 明治図書)の中でも考察を加えた。そして、ついには、『「見たこと作文」の徹底研究』(一九九四年 学事出版)という本まで出版することになった。詳細な検討は、この本に譲るが、本書でもこの実践を取り上げないわけにはいかない。「見たこと作文」の実践が近年希に見る優れた実践だからである。

すでに1冊の本を出しているにもかかわらず、改めて「見たこと作文」を取り上げるところに、大内さんの思い入れの深さがうかがえます。

さて、大内さんは最終的に次の意義を挙げています。

(1)作文の素材と題材を「見たこと」に限定して、行動したことを書かせる方法をとっているために、子供からすれば、「書くことがない」という事態が解消されることになった。
(2)必ずしも国語科作文として実践されているわけではないにもかかわらず、〈発想〉〈実証〉〈論証〉などの国語科作文技術が意識的に指導されている。つまり、国語科作文領域における〈教科内容〉としての作文技術が捉えやすい形で提示されている。
(3)作文の素材(=「ネタ])や教材が子供の自発的な追究を促す機能を含んでいる。また、指導過程も子供の自発的な追究を促し持続させていくように工夫されている。要するに、追究に動機づけられた指導法となっている。
(4)作文の素材(=「ネタ」)や題材(=「ハテナ」)を取り出す過程はもちろんのこと、作文(=追究)活動が続けられている間は、子供の作品をよく読んでやり、よく書けているものは読み聞かせをしてやって、子供の作品を即指導に生かす方法が取られている。つまり、指導全体を通じて子供の思考の体制に沿う指導過程が取られている。
(5)国語科作文としての〈書くことそのものの教育〉(=作文技術の指導)と国語科を超えた〈書くことによる教育〉(=「見る力」・〈追究〉〈思考〉などの教育内容の指導)とが調和的に行われている。
(6)先人の実践の成果や相異なる立場の人々の実践、歴史的な遺産からも虚心に学んでいこうとする〈開放的追試のシステム〉に貫かれている。つまり、〈追試からの創造〉が成し遂げられている。
(7)授業が見える再現可能な授業記録として、授業者による授業記録の到達点を示している。

さらに、次の問題点も指摘しています。

(1)子供の「発見」「考察」を促す新しい素材(=「ネタ」)をどのように掘り起こしていくかが今後の最大の課題である。(この課題を解決する一つの方法は、各種教科の学習の中から出てきた子供の素朴な疑問に着目する方法が試みられている。例えば、見たこと作文研究会編一九九三年 学事出版など。)
(2)〈教育内容〉としての〈追究〉〈思考〉と、〈教科内容〉としての作文技術との相互補完をさらに自覚して実践していくこと。
(3)先行する「見たこと作文」の実践を追試して、原実践との比較検討を行い、その異同を明らかにして、実践自体のレベルアップを図っていくべきである。
(4)授業記録の書き方として、スムーズに展開された部分ばかりでなく、授業の展開が思いがけない方向にもつれ込んでしまった場面の記述なども意識的に記述していく努力も望まれる。

基本的には、『「見たこと作文」の徹底研究』において取り上げられた《教科内容論》《教材開発論》《指導過程論》《指導技術論》《授業記録論》を踏まえた内容です。強いて挙げるならば、意義(5)や問題点(2)からもうかがえるように、《教育内容論》に関わる項目を取り立てているところが、新しい特徴でしょうか。

「見たこと作文」関連の文献は、すでに紹介済みですので、ここでは《教育内容論》に関連しそうな上條さんの著書を取り上げます。それが本書です。「まえがき」から引用します。

 ノート指導の小さな提案である。こだわりのノート指導に関する実践と考察の書である。
 学習はノートと鉛筆があればできる、学ぶモノ・コトは目の前にいくらでもある——これがわたしの「哲学」であった。
 「ノート指導=作文指導」ときづいた時から何かが変わり始めた。
 この点を意識する前と後では何かがはっきりとちがってきた。子どもたちのノートがみるみる上達した。
 この一点で従来の多くのノート指導の本とは違っているはずだと自負する。
 本書では、以下の三点を書いた。
 ・現代のノート指導とは(Ⅰ章)
 ・五つの技術原則と実践(Ⅱ章、Ⅲ章)
 ・学習者の時代のノート(Ⅳ章)
 もちろん中心はⅡ章とⅢ章の「コツと実例」である。

「学ぶモノ・コトは目の前にいくらでもある」という言葉からもうかがえるように、本書ではさまざまな教科における実践が取り上げられています。特定の教科に限らず、子どもたちが作文によって「学ぶモノ・コト」とは何か。作文における《教育内容論》、すなわち〈書くことによる教育〉の問題について、本書を手がかりに考えてみたいものです。

まえがき
Ⅰ章 ノート指導とは
 一 ノートは授業の「鏡」である
 二 入力型ノートと出力型ノート
 三 ノートは「作文」である
Ⅱ章 ノート指導の究極のコツ
 一 授業感想文からスタートする
  (1)大森修氏の授業感想文
  (2)有田和正氏の授業感想文
  (3)わたしの授業感想文の方法
 二 「授業感想文」指導のコツ
  (1)「三つある式」を教える
  (2)「気づいたこと・考えたこと」
  (3)「データ」を出す
 三 集中力を高めるノート指導のコツ
  (1)時間を指示する
  (2)規模を指示する
  (3)数に挑戦する
 四 ほめ方でノートが変わる
  (1)ノートを「見る」技術
  (2)ノートに「赤ペン」を入れる技術
  (3)ノートを「広める」技術
 五 発表原稿としてノートを使う
  (1)ノートを読み上げる
  (2)ノートを見ながら話す
  (3)ノートなしで話す
Ⅲ章 場面別・ノート指導の実際
 一 「学習材」と出会う
  (1)感想を書く
  (2)学習問題を作る
  (3)イメージ地図を作る
 二 問題と対峙する
  (1)予想を書く
  (2)理由の文を書く
  (3)吟味したことを書く
 三 調べ学習をする
  (1)枠を外してみよう
  (2)比べ読みする
  (3)教室の外へ出る
 四 資料を考察する
  (1)絵を読む
  (2)図を読む
  (3)表を読む
 五 まとめをする
  (1)一番頭を使ったこと
  (2)鉛筆対談をする
  (3)引用し検討する
Ⅳ章 ノート指導と「学習者の時代」
 一 「学習者の時代」のノート指導
 二 技術としてのノート
 三 未来のノートはどうなるか
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