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『すぐ使える小作文指導のアイディア』 [書籍]


すぐ使える小作文指導のアイディア

すぐ使える小作文指導のアイディア

  • 作者: 早坂 五郎
  • 出版社/メーカー: 東洋館出版社
  • 発売日: 1993/06
  • メディア: 単行本


大内善一さんは『作文授業づくりの到達点と課題』(東京書籍)の「まえがき」において、「作文授業づくりに関してのケース・スタディ」の作業を行う必要性を述べています。『思考を鍛える作文授業づくり』(明治図書)でも行われた検討作業を踏まえて、少し時代をさかのぼり、昭和四十年代以降の実践を取り上げています。

さて、大内さんは『作文授業づくりの到達点と課題』「第Ⅵ章 負担感の軽減を図った作文授業づくり」において「短作文」を取り上げています。『国語教育の技術と精神』(新光閣書店)において提唱された「短作文」ですが、膨大な授業実践事例リストの中から、大内さんは「実践の経過が比較的詳しく報告されているもの」として、本書も含めた次の三つの文献を取り上げています。

文献(9)塩澤邦雄編/横浜作文同人・珠韻会著『短作文による指導のアイデア春夏秋冬』一九九二年 明治図書
文献(12)吉永幸司編著『子どもが喜び基礎力が育つ短作文の指導事例集』(低学年中学年高学年)一九九三年 明治図書
文献(14)早坂五郎・原秀夫編著『すぐ使える小作文指導のアイディア』一九九三年 東洋館出版社

文献(14)に対して、大内さんは「効率のよい指導法を『授業の実際』の形にし、〇分から四五分までの一単位時間の『学習の流れ』として示し」ている点など、「授業過程の記録の方式として注目すべき工夫もなされていて評価できる」と述べています。

ただし、「個々の実践事例の分析を通して、次のような問題点」を指摘しています。

▽ 各実践事例の冒頭で「教材」と呼ばれているもの、例えば「しゃぼん玉遊び」といったタイトルは、〈単元名〉と呼んだ方が妥当である。
▽ 「小作文とはまとまりのある短い文章」と規定されているが、作文の分量面から見ると、いわゆる「短作文」というより〈短時間作文〉と見るべき性格の事例が少なくない。例えば、「中心をはっきりさせて」(小三)、「地域の自然汚染を見つめよう」(小五)、「環境サミットのメッセージ」(小六)などは、四〇〇字以上の作文を書かせている。
▽ 単元名と〈指導事項〉との間に不整合が見られる事例が存在する。例えば、「書き出しのくふう」(小二)事例では、「必要な事柄を集める」という取材活動に関する〈指導事項〉が掲げられていて不自然である。
▽ 〈指導事項〉と〈書く活動〉との間にも不整合が見られる事例が存在する。例えば、「しょうたいじょうを書こう」(小二)という事例では、「見聞した事、経験した事を順序を整理して書く」という〈指導事項〉が掲げられている。しかし、このことを「招待状」を書くことで指導する必然性が希薄である。「しゃぼん玉遊び」(小二)という事例でも、右と同じ〈指導事項〉を「詩」を書くことで指導することになっているが、やはり必然性に欠ける。
▽ 「小作文のアイディア」としては良いものでも、〈指導過程〉や〈指導技術〉にやや工夫不足のものが見受けられる。例えば、「ぶんをつないでおはなししよう ことばをもとにぶんをつくろう」(小一)では、「五十音のカードを使って言葉作り」をすることとその言葉から文を作らせたり、文章を作らせるという指導との間につながりがやや希薄である。また、「物語をリレーで書こう」(小五)では、コンピュータの操作の仕方の指導から始めて簡単なお話の筋を考えさせるという実践であるが、敢えてコンピュータの操作の仕方に興味を示す様子は想像できるが、創作をしていく様子や出来上がった作品が示されていないため不明である。
▽ 「詩」とか「新聞記事」「メッセージ」といった特殊な表現形態の文章を書かせる〈書く活動〉を導入する場合には、これらの表現形態や書き方について特別な指導が必要である。例えば、「見つけた」(小三)の「詩」、「クラブ新聞を作ろう」(小四)の「トップ記事」、「環境サミットのメッセージ」(小六)の「メッセージ」「標語」「コピー」などについては、これらの特殊な表現形態についてなんらかの指導をしたと思われる形跡が見えない。

『国語教育の技術と精神』において取り上げた「短作文」の授業づくりの問題点も踏まえながら、実践していきたいものです。

書く力は継続から
第一章 小作文の勧め(理論編)
 1 新しい学力観と小作文
  (1)新しい学力観とは
  (2)児童の側に立つ学習指導とは
  (3)小作文の教材開発の実際
 2 小作文と「作文力」
  (1)小作文の意義
  (2)児童が身に付ける「作文力」
   〈1〉「作文力」とは
   〈2〉学習指導要領の表現の指導事項の系統
 3 教育現場のニーズに対応させた本書の特長
  (1)国語科学習指導案と学習の流れ
  (2)小作文の教材開発例
  (3)児童の実態から教材を設定
  (4)カード・プリント・教材文などの資料
  (5)作文単元との関連
  (6)「支援の手立て」
第二章 指導案と学習の流れ(実践編)
 第1学年の小作文
  1 あいうえおことば(口頭作文)
  2 あめがおはなししているよ(語彙)
  3 ぶんをつないでおはなししよう(口頭作文)
  4 たのしいちずをつくろう(取材)
  ◎ そのほかの小作文
 第2学年の小作文
  1 書き出しのくふう(記述・書き出し)
  2 しょうたいじょうを書こう(記述・招待状)
  3 しゃぼん玉遊び(記述・共同詩)
  4 分かるように書こう(推敲)
  ◎ そのほかの小作文
 第3学年の小作文
  1 えんぴつの写生(記述・写生文)
  2 本の帯を書こう(記述・読書)
  3 見つけた(記述・詩)
  4 中心をはっきりさせて(構成)
  ◎ そのほかの小作文
 第4学年の小作文
  1 メモを取ろう(メモと再構成)
  2 わたしの昆虫記(記述・観察)
  3 たんていメモを使って紹介文を書こう(構成)
  4 クラブ新聞を作ろう(記述・新聞)
  ◎ そのほかの小作文
 第5学年の小作文
  1 地域の自然汚染を見つめよう(記述・意見文)
  2 わたしたちの遊びを紹介しよう(記述・紹介文)
  3 キーワードから主題へ(語彙)
  4 物語をリレーで書こう(記述・共同創作)
  ◎ そのほかの小作文
 第6学年の小作文
  1 環境サミットのメッセージ(記述・意見文)
  2 三ツ沢競技場の紹介をしよう(記述・紹介文)
  3 詩を書こう(記述・詩)
  4 小学校で書いた作文を推敲しよう(推敲)
  ◎ そのほかの小作文
 (コラム)「白い本」の作り方と効果的な指導
 (コラム)視聴覚機器の利用
 (コラム)「座右の銘」
第三章 児童の実態(資料編)
 1 「あなたが、作文を勉強するとき、むずかしいものはどれですか」
  ●教師と児童との比較
 2 「春」から連想する語について
 (1)分析の視点
 (2)分析と考察
  ●2年、4年、6年「春」の連想語彙表
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