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『子どもが喜び基礎力が育つ短作文の指導事例集 低学年』 [書籍]


子どもが喜び基礎力が育つ短作文の指導事例集〈低学年〉

子どもが喜び基礎力が育つ短作文の指導事例集〈低学年〉

  • 作者: 吉永 幸司
  • 出版社/メーカー: 明治図書出版
  • 発売日: 1993/04
  • メディア: 単行本


大内善一さんは『作文授業づくりの到達点と課題』(東京書籍)の「まえがき」において、「作文授業づくりに関してのケース・スタディ」の作業を行う必要性を述べています。『思考を鍛える作文授業づくり』(明治図書)でも行われた検討作業を踏まえて、少し時代をさかのぼり、昭和四十年代以降の実践を取り上げています。

さて、大内さんは『作文授業づくりの到達点と課題』「第Ⅵ章 負担感の軽減を図った作文授業づくり」において「短作文」を取り上げています。『国語教育の技術と精神』(新光閣書店)において提唱された「短作文」ですが、膨大な授業実践事例リストの中から、大内さんは「実践の経過が比較的詳しく報告されているもの」として、本書も含めた次の三つの文献を取り上げています。

文献(9)塩澤邦雄編/横浜作文同人・珠韻会著『短作文による指導のアイデア春夏秋冬』一九九二年 明治図書
文献(12)吉永幸司編著『子どもが喜び基礎力が育つ短作文の指導事例集』(低学年中学年高学年)一九九三年 明治図書
文献(14)早坂五郎・原秀夫編著『すぐ使える小作文指導のアイディア』一九九三年 東洋館出版社

文献(12)に対して、大内さんは「『指導のねらい』『指導のポイント』『指導の実際』『板書例』『ノート例』『作品例と評価』など、授業の実際が簡潔に分かりやすく記述されていて、授業記録の記述の仕方という点で評価できる」「各学年ごとに『作文年間指導計画』が示されているので、年間を通しての作文授業づくりへの見通しを持つことができて有益である」と述べています。

ただし、「個々の実践事例を仔細に分析していくと、次のような問題点を指摘することができる」とも述べています。

▽ 各学年の実践事例とも「短作文で書くことを楽しむ」「短作文で考える力を育てる」「短作文で伝える力を伸ばす」という三つの視点に分類されて実践されているのは問題である。(1)「書くことを楽しむ」こと、(2)「考える力を育てる」こと、(3)「伝える力を伸ばす」ことを有機的に組み合わせて指導していくことが作文授業づくりの重要な課題だからである。
▽ 「作品例・評価と指導」の欄が設けられているのはよいが、評価の内容が作品の評価を中心としていて、作文活動自体に関する評価が少ないのは残念である。
▽ ほとんどの実践事例に指導時数がどこにも明記されていないのは、実践事例の報告としてはかなり致命的な欠陥である。
▽ 〈書く活動〉の種類が作文ジャンル・作文の分量の面から見て、特に「短作文」として位置づけなければならない理由が見当らない事例がある。例えば、「メダカの卵の観察」(小五)は、従来の観察記録文の指導とほとんど変わるところがない。
▽ 授業で取り上げた〈書く活動〉の必然性を子供たちにどのように自覚させたのかがよく理解できない事例がある。例えば、「学習記録を書こう」(小四)では、どうして「短作文」の学習で「学習の記録」を書かなければならないのか、その動機・理由を子供たちにどのように指導したのかが明らかにされていない。「新聞記事作文」(小六)でも、「今朝や昨日の出来事」を新聞記事として書くべき理由を子供たちにどのように理解させたのかが不明確である。
▽ 「指導のねらい」ところを達成するための〈書く活動〉との間に不整合が見受けられる。例えば、「三十一文字短作文『口語短歌』」(小六)では、「言葉を選んで、短い文で表現する」という「指導のねらい」は妥当であるが、このねらいを達成するための短歌づくりという〈書く活動〉はレベルが高すぎる。『サラダ記念日』の中の佐佐木幸綱の跋文と俵万智のあとがきをヒントにした「三十一文字短作文の条件」だけでは、口語短歌の創作は困難である。
▽ 「指導のねらい」と「指導のポイント」とを読んでも〈指導事項〉(=何を教えるか)が明確にならない事例が見受けられる。例えば、「題名拝借作文」(小六)では、「指導のねらい」の中に「『書くことがない』という子どもたちに、題名のヒントを与え」とある。しかし、「題名」から題材を決めさせていくことには無理がある。「題名」のつけ方の指導なのか、「題材」選びの指導なのかがあいまいである。
▽ 同一学年でよく似た題材での実践が報告されている。例えば、「ここはどこだ?(作文スケッチでクイズをつくろう)」(小三)と「紹介クイズ作文」(小三)。後者の実践の方がはるかにレベルが高い。両者を取捨選択してよい実践の方を取り上げるべきである。「私の見えないいいところを教えてあげる」(小三)と「どうぞよろしく(自己紹介を楽しく)」(小三)の事例も同様である。

ここでの「短歌づくり」と同様に、『作文の基礎力を育てる短作文のネタ』では安易な「俳句づくり」に対する警告も行われていました。「短作文」のように文章が短ければ簡単に書けるという誤解に陥らないよう、気をつけて実践していきたいものです。

まえがき
Ⅰ 低学年の短作文指導
  1 短作文で育つ子どもの力
  2 短作文の指導のねらい
  3 短作文の指導の方法
Ⅱ 短作文の指導事例
 一 短作文で書くことを楽しむ事例〈1年〉
  1 ゆめのおはなし「虫になって」
  2 かっこいい書き出し
 二 短作文で書くことを楽しむ事例〈2年〉
  1 あいさつことば
  2 あなたのよいところ
 三 短作文で考える力を育てる事例〈1年〉
  1 思い出のアルバム
  2 新一年生への手紙
 四 短作文で考える力を育てる事例〈2年〉
  1 ひとりで行ってもいいでしょう
  2 変身作文を書こう(「ぼくは○○○」「わたしは○○○」)
 五 短作文で伝える力を伸ばす事例〈1年〉
  1 いいことおしえてあげるね
  2 絵を見てお話作り
 六 短作文で伝える力を伸ばす事例〈2年〉
  1 どこだ、どこだ、どこにいるの
  2 おたよりを出そう
Ⅲ 短作文から教科書(単元)作文へ
  一年生の作文年間指導計画
  二年生の作文年間指導計画
 一 短作文を生かした作文指導の展開〈1年〉
  1 短作文を書くことから絵日記へ(一年一学期)
  2 「  」を使ったお知らせ(一年二学期)
  3 作文の伸びを確かめ、作文の成長を願う(一年三学期)
 二 短作文を生かした作文指導の展開〈2年〉
  1 短作文から順序を踏まえた作文へ(二年一学期)
  2 「ぶんぶんごま」(光村下巻)の学習へ(二年二学期)
  3 「がんばったお手伝い」の学習へ(二年三学期)
短作文指導上の留意点
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