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『読書へのアニマシオン 75の作戦』 [書籍]


読書へのアニマシオン―75の作戦

読書へのアニマシオン―75の作戦

  • 作者: マリア・モンセラット サルト
  • 出版社/メーカー: 柏書房
  • 発売日: 2001/12
  • メディア: 単行本


本書は前著『読書で遊ぼう アニマシオン』(柏書房)の続編に当たるものです。引き続き「まちがい」に注目して、75の作戦を見ていきましょう。

1 読みちがえた読み聞かせ
 ごく小さな子ども向けの作戦です。同じ物語を二度読んで聞かせ、二度目に読んだときに、読み間違えたところを子どもに見つけさせるので、「読みちがえた読み聞かせ」というタイトルがよいでしょう。
 子どもが間違いを発見するときによく言う「違ったよ」というタイトルでもよいかもしれません。

5 いる? いない?
 脇役も含めた登場人物が、本に出てきたかどうかを見つけだすことをねらいとした作戦です。そこで「いる? いない?」という、内容をよく表した楽しいタイトルをつけました。

8 にせもの文
 これは本物のテクストのなかに紛れこんだ、にせものの文章を探しだす作戦ですから、このタイトルがぴったりでしょう。
 「にせもの文」は、内容をよく表した、興味をそそられるタイトルだと思います。

10 つかまえるよ!
 「つかまえるよ!」と言っても、かくれんぼで遊ぶときのように仲間をつかまえるのではなく、比喩的な意味でつかまえます。すなわち物語の一部を音読している仲間が間違えたら「つかまえる」という作戦です。
 すべてのアニマシオンがそうであるべきように、活気にあふれ、楽しく、ドキドキする作戦なので、子どもたちはいやおうなく集中します。「つかまえるよ!」というのは、内容によく合ったタイトルだと思います。

13 誤植
 文に仕組まれた間違いを探すので、一番ふさわしいタイトルは「誤植」だと思います。これはジャーナリズム業界の用語で、ここでは比喩的な意味で使われています。

18 これがあらすじです
 作戦の命名にあたっては、いくつも候補があがりました。「私はあらすじを持っています」や「あらすじ発見」は、選からもれたものの、なかなか良いタイトルだと思います。もっと良さそうなタイトルがあればそれを使ってもかまいませんし、前述のなかから好きなものを選んでもよいでしょう。

19 海賊文
 本から抜き出した段落に挿入された、本のテクストとまったく関係のない文を探しだす作戦です。文を一つ挿入しただけで、登場人物の行動や心理も、段落の意味もまるっきり変わってしまいます。海賊に乗っとられたという意味で「海賊文」と名づけました。

32 どれが本当の話?
 この作戦で使う紙を読めば、「どれが本当の話?」がふさわしいタイトルだということがわかるでしょう。ある状況の要約が、本の内容と合っているかどうかを見わける力をつけることをねらいとした作戦です。

36 物語ではそう言ってる?
 この作戦の目的は、あとから読んだ段落と、本で読んできた段落のどこが違うか、見わける力を引き出すことです。表面的な読みから深い読みへと、子どもたちの読みをだんだんと深めていきます。

以上、9つの作戦です。これらの作戦の「まちがい」について、次の3つの特徴を比較してみましょう。

【種類】何を当てるか?
【方法】どのように当てるか?
【人数】何人で当てるか?

【種類】には、読みまちがい、語や文のまちがいなどの違いがあります。【方法】には、「まちがいさがし」と「ほんものえらび」があります。【人数】には、当てる人数が1人・2人・3人という違いがあります。

前著の作戦との対応を見ながら、この3つの特徴を示してみましょう。

1 読みちがえた読み聞かせ
→作戦1 アニメーターの読みまちがいを子どもが言い当てるゲーム「ダウトをさがせ」
【種類】2回目に変更した読み
【方法】まちがいさがし
【人数】1人

5 いる? いない?
→作戦5  物語に出てきた人物と登場場面を見つけるゲーム「この人いたかな? いなかったかな?」
【種類】登場人物
【方法】ほんものえらび
【人数】1人

8 にせもの文
→作戦8 段落内に紛れ込んだ異質な文章を見つけるゲーム「わりこみはアウト!」
【種類】挿入した文
【方法】まちがいさがし
【人数】1人

10 つかまえるよ!
→作戦10 他の人の読みまちがいを発見し、その場で指摘するゲーム「まちがいセンサー」
【種類】子どもの読み
【方法】まちがいさがし
【人数】1人

13 誤植
→作戦13 本から抜き出した文章の変更に気づくゲーム「変装文を見破れ」
【種類】2回目に変更した語
【方法】まちがいさがし→ほんものえらび
【人数】1人

18 これがあらすじです
→作戦18 3つのあらすじの中から本物のあらすじを選ぶゲーム「本の植木屋さん」
【種類】要約
【方法】ほんものえらび
【人数】1人

19 海賊文
→作戦19 抜き出した段落に侵入した、物語の筋に反する言葉や文を見つけるゲーム「インベーダーをさがせ」
【種類】挿入した語・文
【方法】まちがいさがし
【人数】1人

32 どれが本当の話?
→前著にない作戦
【種類】要約
【方法】ほんものえらび
【人数】3人

36 物語ではそう言ってる?
→前著にない作戦
【種類】変更した語
【方法】まちがいさがし
【人数】2人

このうち、前著にない作戦、つまり「32 どれが本当の話?」「36 物語ではそう言ってる?」を見てみましょう。

作戦「32 どれが本当の話?」の【方法】は「ほんものえらび」です。他の作戦では、「5 いる? いない?」や「18 これがあらすじです」が「ほんものえらび」です。これらの作戦の共通点は何でしょうか? それは【種類】を見ると分かります。作戦5は「登場人物」、作戦18は「要約」です。他の作戦は本文のテクストをもとに「まちがいさがし」をするのですが、これらの作戦では、本文のように厳密なテクストを対象としていないので、「ほんものえらび」という【方法】が選ばれたのだと思われます。

また、作戦32の【人数】は3人です。これが作戦「18 これがあらすじです」との唯一の違いです。作戦18・32は3択形式で「ほんものえらび」をします。だから、作戦32は作戦18と差別化するために【人数】を3人にするという、アニマシオンとしては珍しいグループ分けになっているようです。

作戦「36 物語ではそう言ってる?」の【人数】は2人です。これも、基本的に1人で活動するアニマシオンでは珍しいペアです。なぜ、この作戦は2人なのでしょうか? この作戦の【種類】は「語」、【方法】は「まちがいさがし」です。作戦「8 にせもの文」、作戦「13 誤植」、作戦「19 海賊文」と似たような作戦です。ただし、作戦8は「にせもの文」を紛れこませる点に特徴があります。作戦13は「原文の段落」が書かれた紙を回収した後に「変更を加えた段落」を配る点に特徴があります。作戦19は「登場人物の考えや人物像が変わってしまうような言葉や文」を挿入する点に特徴があります。特に、作戦8と作戦19は「文」と「語」しか、大きな違いはありません。こられに加えて新しい「まちがいさがし」の作戦を考えようとするならば、作戦36のように【人数】を変えるしかなかったと思われます。

以上のように、似たような作戦の異同を細かく見ていくと、それぞれの作戦の成立過程や特徴が見えてくると思われます。その作戦ならではの特徴をとらえて、実践したいものです。

はじめに ホセ・アントニオ・マリーナ
一九八四年版への序文 フランシスコ・クベルス・サラス
凡例
序説
作戦
  1 読みちがえた読み聞かせ
  2 これ、だれのもの?
  3 いつ? どこで?
  4 何を言いたいの?
  5 いる? いない?
  6 本と私
  7 どんな人?
  8 にせもの文
  9 だれのことを言ってる?
 10 つかまえるよ!
 11 これが私のつけた書名
 12 前かな? 後ろかな?
 13 誤植
 14 ブルル
 15 合戦
 16 それぞれのタイトルを、あるべき場所に
 17 …と言っています
 18 これがあらすじです
 19 海賊文
 20 ファラウテはだれ?
 21 アングルを変えて
 22 …と言われています
 23 想像のはさみ
 24 だれが、何を、どのように?
 25 チームで遊ぼう
 26 ここだよ
 27 これ、君のだよ
 28 本から逃げた
 29 物語を語りましょう
 30 何てたくさんのものがあるんでしょう!
 31 どうして?
 32 どれが本当の話?
 33 こう始まり、こう終わる
 34 彼を弁護します
 35 その前に何が起きた?
 36 物語ではそう言ってる?
 37 だれが…でしょう?
 38 ここに置くよ
 39 何のために?
 40 私はこう考える
 41 なぞなぞを言って、説明するよ
 42 わたしの言葉、どこにある?
 43 みんなの記憶
 44 詩人の気持ち
 45 いい詩だなあ!
 46 あなたは、私と一緒に
 47 これが私の絵
 48 吟遊詩人
 49 だれが、だれと?
 50 どこですか?
 51 何かの役に立つ?
 52 今度は私の番
 53 よく見る、見える
 54 だれが、だれに、何を?
 55 聴いたとおりにします
 56 詩人の対話
 57 俳句で遊ぼう
 58 みんなで一つの詩を
 59 それ、本当?
 60 ばかだなあ!
 61 詩人はこううたう
 62 この文には、意味があります
 63 一緒のほうが、うまくいく
 64 一見して
 65 そして、そのとき…が言いました
 66 舌がもつれる
 67 この詩が好き
 68 詩を持ってきました
 69 言葉が飛んでいった
 70 意味は、はっきりしてる?
 71 発見しました!
 72 いいですか、いけませんか?
 73 この本を好きなわけ、知っていますか?
 74 考えていることを言います
 75 私なら消さない
訳注
監修者あとがき
Bibliografia
付録
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