SSブログ

『みんなの綴方教室』 [書籍]


みんなの綴方教室―実践生活綴方ノート 2 (1973年)

みんなの綴方教室―実践生活綴方ノート 2 (1973年)

  • 作者: 国分 一太郎
  • 出版社/メーカー: 新評論
  • 発売日: 1973
  • メディア: -


上條晴夫さんは『子どものやる気をひきだすノート指導』(学事出版)において、「授業感想文」指導のコツを示しています。その一つが、本書に出てくる「三つある式」です。

 (イ)まず、すべての子どものつづりかた用箋、原稿用紙、ノートのはじめに「私のくせ」と題を書かせ、ついで、
 ☆わたしにはわるいくせが三つある。
と「書きだし」の文を書かす。その下につづけて、「なにすること」と「なにすること」と「なにすること」であると、そのくせをあげさせる。
 (ロ)つぎに行をべつにし、新しい段落をつくることにして、「第一のくせ」の説明をしなさい。こういいつける。
 (ハ)つぎにおなじようにして「第二のくせ」の説明。
 (ニ)つぎにやはり「第三のくせ」の説明。
 (ホ)自分の「わるいくせ」について、まとめて考えていること、感じていることがあったら、それを書かせる。また、よい「くせ」もあるというなら、それもかかせる。

このような書き方を授業感想文にも活用できるとして、上條さんは、さまざまなバリエーションを示しています。たとえば、三つの理由について「重要であると思う順番に書きなさい」「重要なものほど詳しく、つまり長く説明しなさい」と指示したり、「理由は○つである」のように理由の数を指示したりできます。

そもそも、本書の著者、国分一太郎さんは「三つある式」について、「長いあいだ、やや長いあいだにわたって、経験し考え感じている具体的なことを、まとめて説明風につづらせる」ための「構成・構想の指導」として紹介しています。このようなタイプの文章は「過去のできごと、過去の経験を、それがあった順序どおり・時間のうつりかわりにそのままそって書きつづる」「文章の構成・構想を事件の推移・時間の進行の順序にそうてつくりあげる」のではありません。そのため、頭の中では「再生的想像(表象)」だけでなく、「かなりの程度の創造的・構成的な想像、思考」が必要とされています。

国分さんの指摘する「再生的」ではなく「創造的・構成的」という言葉に、〈書くことによる教育〉の手がかりがありそうです。上條さんが「出力型ノート」のために「三つある式」を取り上げたのは、このあたりが原因なのかもしれません。

なお、本書の続編として『続みんなの綴方教室』(新評論)も刊行されています。

はじめに
  「みんなの」とするわけ
  だれでもできる
  すべての子どもために
  七〇年代教育
  能力主義
  先天的素質
  平等の原則
  子どもも親も
  つづりかたでそれはできるか
一 まずこのような教室を
  本の勉強と生活の勉強
  生活勉強重視教室
  事実からまなばせるしごと
  話したがり屋、知らせたがり屋
  表現活動をおもくみる教室
  聞きたがり屋、知りたがり屋
  なぜそういう教室になるか
  先生も同じ仲間
  自由な教室
二 いくつかの前提
 1 他の教科や教科外で書かせること
  その教科のために
  つづりかた教育としてではなく
  なまの事実を書く機会
 2 読みかた教育をしっかりやること
  鑑賞享受
  三多の法則
  表現よみ
 3 文字をしっかり教えること
  かな文字
  音節法による指導
  指導の順序
  その上の学年でも
三 ある日ある時ある所であった、あることをつづらせる
  この意味
  基本の基本
 1 入門期の指導
  一年生のために
  教師によるいいなおし
  教師による書きとめ
  よその子の文章を
  「はじめ」「なか」「おわり」の意識
  一年生でない入門期
  まず観察・点検
  鑑賞をさせること
 2 表現意欲をおこさせる指導
  なにを書きたいかの指導
  表現の契機の指導
  契機(モチーフ)のいろいろ
  どこでこの指導を
 3 取材の指導
  取材指導と題材指導
  取材指導の三つの面
  そのひとつ・取材の多面化
  多面化の実際指導
  自由取材と課題取材
  そのふたつ・取材の深化
  その三つ・取材の個性化
  取材から題材へ
 4 題材の指導
  題材指導
  題材
  ふところにいつも三つを
  「よい話を」
  「書きたくてたまらないことを」
  内容的には
  心のゆれうごきへのはたらきかけ
  題材の紹介
  作品の鑑賞批評で
  比較法による指導
  テーマをもたせる題材指導
 5 構成・構想の指導
  構想指導
  パラグラフ(段落)づくり
  なかみとの関係で
  「はじめ」「なか」「おわり」の意識
  こんなふうには書きださせない
  最初の構成意識
  この自覚をつよめるのには
  ひとつの教具
  「ことがら」という学習用語
  理くつと実際
  作品からまなばせる
  作業としてやらせる方法
  いよいよ構想計画を
  事実や事件の順序とちがうかきかたをする構想・構成
 6 記述・叙述の指導
  記述指導
  緊張の態度の指導
  よく思い出させる
  なにを思いだすのか
  ものごとをよく見つめよとは
  正確に書くこと
  文法の知識
  普通の書きだしから
  「会話」からはじめる書きだしは
  よんではつづけろ
  順序よくかけ
  くわしく、こまかく
  よくわかるようにかけ
  不特定多数をあいてに
  色もかけ
  においも書け
  音も書け
  手ざわり、はだざわりも書け
  動作や表情を書け
  ようすやうごきを書け
  あたりのありさまをも書け
  自分がしたことを
  量のことも書け
  性質もうつせ
  変化についてもかかせる
  気持も考えもハッキリ入れる
  気持のあらわれの動作もうつせ
  会話を話しあい、しゃべりあったとおりに
  さまざまな指導方法と機会
  作品鑑賞による
  教師の朗読のとき
  作品研究のとき(1)
  作品研究のとき(2)
  作品研究のとき(3)
  教師の赤ペンで
  週に何人かのため
  ひざもと指導
  練習としての指導
  してきて書かせる
  して見せて書かせる
 7 推考の指導
  まちがい字・ぬけ字直し
  マルとテンとカギ
  段落のはじめと行がえ
  前とうしろのくいちがい
  推考うながしの記号
 8 鑑賞批評の指導
  鑑賞のたいせつさ
  教師の用意
  鑑賞の授業
  つづったあとの鑑賞批評
  つづりかたの授業の特質
  ひとつひとつを読みながら
  ごくあたりまえな鑑賞批評の授業
  内容・生活のしかたを主とした鑑賞批評
  表現方法を主とした鑑賞批評
  協同批正ということでは
  自己批正
  おしまいに
四 長いあいだ、やや長いあいだにわたって、経験し考え感じている具体的なことを、まとめて説明風につづらせる
 1 この指導のためのまえがき
  順序を逆にしないこと
  この書き方は一段とむずかしい
  もうひとつのあやまち
  並行して指導してよい
  とりたてて指導していく
 2 どんな文章を書かせるのか
  まず実例を見よう
  長いあいだ・やや長いあいだの意味
  経験し考え感じていること
  考え感じていることは
  具体的なことを
  「まとめて」の意味
  説明風に書かせる
  説明する述べ方のこと
 3 表現の契機・意欲の指導
  課題でも自由作でも
  知らせたがり屋
  知る意味・よろこび
  説明したがり屋
  仲間は知っていても
  自分の知りぐあい
  教えてあげる意欲
  教師の極意
 4 取材・題材化の指導
  はいりやすいがむずかしい
  けなすな、なれさせろ
  題材のねうちについての意識
  ねうちある題材とは(イ)
  ねうちある題材とは(ロ)
  ねうちある題材とは(ハ)
  低学年でのこの指導
  中学年でのこの指導
  高学年でのこの指導
  中学生のための指導
 5 構成・構想の指導(Ⅰ)
  これが指導のかなめ
  題材化とむすびつく
  いくつかの構成の種類
  さまざまな視点による構成の指導
  構成要素をならべていく構成の指導
  物事を比較していく構成
  前とのちがいをあげていく構成
  はじめに結論をだす構成
  実際の作品にそくして
 6 構成・構想の指導(Ⅱ)
  この場合の練習的方法
  「三つある式」練習法
  「鈴木くんのことを書くなら」法
  「バラしたものの復元」法
  「きれいな印刷で見せる」法
  構成計画表その他
 7 叙述・記述の指導
  つたえる形のすぎさらず
  形容詞のすぎさらず
  述語になる第一形容詞のいいおわる形
  述語になる第二形容詞のいいおわる形
  名詞に「だ」「である」「です」などがついていいおわる形
  ただし文法教育イコールつづる教育ではない
  だからこれと反対に
  読みかた教育でよい説明風の文章を読ませる
  子どものよい作品の叙述にふれさせる
  書きだしの指導(イ)
  書きだしの指導(ロ)
  書きだしの指導(ハ)
  書きだしの指導(ニ)
  つづけぐあいの指導
  説明的叙述の持続のため
  知っていることを書きとおす
  もしべつのひとが書くなら・練習的方法の(1)
  一文一文の吟味・練習的方法の(2)
 8 ここらへんまでの到達を
五 この巻のおわりでのひとこと
あとがき
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学校

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。