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『作文の基礎力を育てる短作文のネタ』 [書籍]


作文の基礎力を育てる短作文のネタ (授業への挑戦)

作文の基礎力を育てる短作文のネタ (授業への挑戦)

  • 作者: 吉永 幸司
  • 出版社/メーカー: 明治図書出版
  • 発売日: 1991/03
  • メディア: 単行本


大内善一さんは『作文授業づくりの到達点と課題』(東京書籍)の「まえがき」において、「作文授業づくりに関してのケース・スタディ」の作業を行う必要性を述べています。『思考を鍛える作文授業づくり』(明治図書)でも行われた検討作業を踏まえて、少し時代をさかのぼり、昭和四十年代以降の実践を取り上げています。

さて、大内さんは『作文授業づくりの到達点と課題』「第Ⅵ章 負担感の軽減を図った作文授業づくり」において「短作文」を取り上げています。『国語教育の技術と精神』(新光閣書店)において提唱された「短作文」ですが、膨大な授業実践事例リストの中から、大内さんは吉永幸司さんたちの事例は「他の実践書と比べて見ると全体として優れた点が多い」として、特に取り上げて分析・考察を行っています。対象にしているのは、本書も含めた次の三つの文献です。

文献(4)吉永幸司編著『作文の基礎力を育てる短作文のネタ』
文献(12)同編著『子どもが喜び基礎力が育つ短作文の指導事例集』(低学年中学年高学年
文献(16)同編著『作文の基礎力を育てる短作文のネタ・第2集』

これらの文献に掲載されている実践事例に対して、「A 題材の機能」「B 題材の適否」「C 題材を生かす手立て」「D 題材を生かす手立ての適否」という四つの観点から分析しています。分析の柱となる「題材の機能」については、次の8項目が挙げられています。

(1)ゲーム的要素
(2)優越感をくすぐる
(3)空想・連想・想像する楽しさ
(4)発見の喜び
(5)願望という欲求を満たす
(6)説得する楽しさ
(7)本音を引き出す
(8)?(その他)

128編の実践事例に対して、それぞれの「題材の機能」の占める割合が示されているのですが、問題点として「(8)の『その他』が三四%を占めていた」点を挙げています。「その他」に分類された「どう見ても『子供に受け、子供が乗ってくる』とは思えない『ネタ』」は、次のような問題点を含んでいると大内さんは考察しています。

▽ 作文活動の設定が「練習作文」的である。つまり、作文活動が「目的と必要と場に応じ」ていない。例えば文献(4)の「一文カードあつめ」(小二)、文献(12)の「かっこいい書き出し」(小一)などの実践である。
▽ 設定されている作文活動に対して子供の側からの必然性が感じられない。文献(4)の「私の学校は」(小四)という題材では、自分の学校の紹介文を書くことになっているが、〈誰に〉に紹介するのかが不明である。隣の学校の同じ学年の人たちに紹介する形にすれば、「優越感をくすぐる」という題材にすることができる。
▽ 題材が陳腐で「新鮮なネタ」とは言えない。例えば、文献(12)の「おたよりをだそう」(小二)、「学習の記録を書こう」(小四)などは、よくある題材で特に「短作文」で書かせなければならない題材でもない。
▽ 発達段階から見て、作文活動に無理が予想される。例えば、文献(12)の「心に残った感動を俳句に」(小四)などは、特別な手立てもなしに俳句の創作を小学校四年生にさせている。俳句は、短い文章だから「短作文」としてたやすく書かせられると思ったのであろうか。

さらに、「題材の機能」に加えて、「題材を生かす手立ての適否」についても、次の問題点を指摘しています。

▽ 〈参考文〉の提示の仕方に題材の意図する方向とのギャップが見られる。例えば、文献(4)の「心に残った言葉を伝えよう」(小三)の実践では、「教科書の物語教材」などを参考にさせて、「  」の使い方を捉えさせている。ところが、この場合の「心に残った言葉」と会話文とは必ずしも結びつかないのである。
▽ 手立てが逆に子供の負担を助長してしまっている。例えば、文献(4)の「題名展覧会」(小四)の実践では、「日記帳や作文ファイルを持たせて、題名集めをさせ」ているが、この作業自体が結構負担になると思われる。
▽ 殊更に無意味な手立てが講じられている。例えば、文献(4)の「作文の手術をしよう」(小五)の実践では、「作文の手順」ということから、「内容の固まり」ごとに「はさみで切り離す」という作業をさせている。
▽ 手立てが必ずしも手立てとしての機能を果たしていない。例えば、文献(12)の「クラブの紹介作文」(小四)の実践では、「紹介カード」を用意して使用させている。しかし、カードを使うという方法自体には特別に目新しい工夫があるわけではない。題材が陳腐な上に手立てがこれだけなので、本当に子供たちの表現意欲をそそるものであるかどうか疑問である。
▽ 教科書の物語教材などの中から取り出された優れた表現を「短作文」のための教材に用いている。例えば、文献(16)の「『たとえ』を使って短作文」(小六)の実践。理解教材の表現を直ちに「短作文」の〈参考教材〉として用いるには、子供の実態を考慮するとギャップがありすぎて問題である。

たとえ優れた実践でも、すべてを肯定するのではなく、問題点を見つけ出して乗り越えようとする大内さんの姿勢を、実践者も学ばないといけないのかもしれません。

まえがき
Ⅰ 作文指導の時間増加にどう対応するか
 一 作文指導の時間増加にどう対応するか
 二 作文嫌いをつくる作文指導からの脱皮を
 三 書く力を育てる「短作文」指導への着眼
 四 「短作文」で書く力を育てる
Ⅱ 書くことの基礎力をつけるネタ
 おねがいの木をつくろう 書くための事柄を見付ける
 しゃぼん玉あそび 書くための事柄を見付ける
 お母さんの自慢大会をしよう 順序よく書く
 みつけたこと、おもったこと 文と文とを続けて簡単な文章を書く
 みんながしゃべったことを集めよう かぎ「 」の使い方に注意する
 きてください、みてください 助詞の「は・へ・を」を正しく使う 促音などの表記
 ぼくの方がじょうずやわ 促音などの表記
 三羽のインコ 題材について必要な事柄を集める
 この子はだあれ 題材について必要な事柄を集める
 ふしぎなふくろ 順序を整理して書く
 ニュースカメラマン 順序を整理して書く
 一文カードあつめ 句点や読点の打ち方に注意して書く
 これほんとう! 言葉の響きに関心を持つ
 題付き日記 事柄を選んで書く
 まどから見たけしき よく観察してから書く
 ことわざをつくろう よく観察してから書く
 虫めがねをのぞいて よく観察しながら細部を的確に書く
 私の好きな犬の「ゆう」 よく観察し特徴を整理する
 だいすきなうんどう場 必要な事柄を選び整理する
 メンコの必勝法を教えます 順序を整理して分かり易く説明する
 今日の料理教室「私は名シェフだ」 語句を増しその使い方の範囲を広げる
 心に残った言葉を伝えよう かぎ「 」を適切に使って内容や様子を書く
 私の大好きなものはなあに 片仮名を文中で適切に使って書く
 ちがいを見つけよう よく観察してから書く
 見たまま感じたまま五感作文 事象を客観的に文章に書き表す
 ○○さんを見直した 事象を客観的に文章に書き表す
 題名展覧会 事柄を選び整理してから書く
 生活国語辞典を作ろう 考えをはっきりさせてから書く
 今日のよかったこと 考えをはっきりさせてから書く
 たばこは○○○ 考えをはっきりさせてから書く
 ○○売り込み広告 考えをはっきりさせてから書く
 私の学校は 中心点が明確になる書き方を考えて書く
 めだかの会話 立場を変えて、客観的に文章に書き表す
 会話文だけ日記 相手の話の内容をとらえて書く
 パロディー昔話 段落と段落との続き方を考えて書く
 擬態語を使って詩を作ろう 擬態語のおもしろさに気づく
 作文道案内 つながりを考えながら、指示語を適切に使う
 四こま作文 構成を考えて書く
 心の綱引き(葛藤)作文 表現することによって、考えを確かにする
 作文の手術をしよう 文章を読み返し、叙述を工夫する
 ……それで……作文 指示語、接続語を的確に使う
 伝言を頼まれて 要約してメモをとる
 とっておきの楽しい話 全体を見通し整理してから書く
 日記を書きかえてみよう 優れた表現を自作に役立てる
Ⅲ 短作文のネタ開発の方法
 一 学習指導要領から
 二 教科書を短作文指導に生かす
 三 国語科以外の教科・領域を短作文指導に生かす
 四 発達特性を短作文指導に生かす
Ⅳ ネタ開発のアイデア
 一 「どっちかな」にこだわると、乗ってくる—低学年—
 二 一点集中させると、乗ってくる—中学年—
 三 完成後の姿を見せると、乗ってくる—高学年—
 四 「○○シリーズ」で、乗ってくる活動を探る
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『国語教育の技術と精神』 [書籍]


国語教育の技術と精神 (1965年)

国語教育の技術と精神 (1965年)

  • 作者: 藤原 与一
  • 出版社/メーカー: 新光閣書店
  • 発売日: 1965
  • メディア: -


大内善一さんは『作文授業づくりの到達点と課題』(東京書籍)の「まえがき」において、「作文授業づくりに関してのケース・スタディ」の作業を行う必要性を述べています。『思考を鍛える作文授業づくり』(明治図書)でも行われた検討作業を踏まえて、少し時代をさかのぼり、昭和四十年代以降の実践を取り上げています。

さて、大内さんは『作文授業づくりの到達点と課題』「第Ⅵ章 負担感の軽減を図った作文授業づくり」において「短作文」を取り上げています。かなり盛んに行われるようになった「短作文」の授業に対して、大内さんは「『短作文』の本質とその授業の目的・意義に対する誤れる認識が存在する」と指摘しています。その点を裏付けるために、大内さんは1995年3月までを対象として、次のような「『短作文』関係の実践・研究書、雑誌などでの特集・連載文献」の比較検討を行っています。

(1)藤原与一著『国語教育の技術と精神』一九六五年七月 新光閣書店
(2)大西道雄著『短作文指導の方法—作文の基礎力の完成—』一九八〇年四月 明治図書
(3)佐藤貞年著『短作文指導の授業形態』一九八一年三月 明治図書
(4)吉永幸司編著『作文の基礎力を育てる短作文のネタ』一九九一年三月 明治図書
(5)大西道雄著『短作文の授業』一九九一年三月 国土社
(6)大西道雄著『作文の基礎力を完成させる短作文指導』一九九一年六月 明治図書
(7)藤原宏監修/実践作文の会編著『新訂 書く機会を広げる短作文の指導』(1・2年3年4年5年6年)一九九二年五月 明治図書
(8)渡部栄二著『10分間作文学習システムの提案』一九九二年五月 明治図書
(9)塩澤邦雄編/横浜作文同人・珠韻会著『短作文による指導のアイデア春夏秋冬』一九九二年六月 明治図書
(10)藤原宏・小森茂編『小学校国語科指導細案 楽しく書く作文指導細案』(1年2年3年4年5年6年)一九九二年六月 明治図書
(11)さざなみ国語教室・吉永幸司/森邦博編著『ファックス版 作文の基礎力を育てる短作文ワーク』(『教育科学国語教育』別冊2)一九九二年十一月 明治図書
(12)吉永幸司編著『子どもが喜び基礎力が育つ短作文の指導事例集』(低学年中学年高学年)一九九三年四月 明治図書
(13)横田経一郎著『楽しい短作文のネタ50選』一九九三年四月 明治図書
(14)早坂五郎・原秀夫編著『すぐ使える小作文指導のアイディア』一九九三年七月 東洋館出版
(15)吉永幸司著『作文の基礎力を育てる短作文の評価』一九九三年十月 明治図書
(16)吉永幸司編著『作文の基礎力を育てる短作文のネタ・第2集』一九九四年一月 明治図書
(17)大西道雄著『短作文の評価と処理』一九九四年四月 明治図書
(18)さざなみ国語教室・吉永幸司/森邦博編著『ファックス版 作文の基礎力を育てる短作文ワーク・第2集』(『教育科学国語教育』別冊5)一九九四年六月 明治図書
(19)大西道雄編著『短作文指導法の開拓』(小学1—2年小学3—4年小学5—6年〉)一九九四年十月 明治図書
(20)瀬川栄志著『新しい学力観に立つ短作文ステップ学習』一九九四年十一月 明治図書

 ※その他、雑誌の主要な特集・連載に次のような文献がある。
○『実践国語研究』一九九二年八・九月号特集「何を書くかどう書くか=短作文のポイント」
○『教育科学国語教育』一九九三年六月号特集「力をつける短作文指導の授業づくり」
○『実践国語研究』一九九四年八・九月号特集「一人ひとりの書く力を伸ばす短作文の授業」
○『教育科学国語教育』一九九一年四月号〜一九九五年三月号現在までの実践報告連載「短作文指導の新しいネタ」

「短作文」文献一覧の最初にリストアップされたのが本書です。本書に対して、大内さんは次のように述べています。

 「短作文教育」を初めて提唱した藤原与一は、文献(1)『国語教育の技術と精神』の中で、「短作文」を従来の「長作文」と同一次元で位置づけようとしている。「短作文」自体を、日常の言語生活の中で独立した位置を占めている文章と見なしている。つまり、「短作文」を従来の「長作文」の下準備的なもの、従属的なものとは少しも考えていなかったのである。「短作文」の「短」=「基礎力」などとは考えていなかったのである。

それでは、藤原さん本人は「短作文教育」をどのようなものと考えていたのか、本書から引用してみましょう。

 書くことの自然性を、あやまちなく持続させるために、教育法として、小作業・小課題の教育(——つまり負担感の小さいもの)を考える。その、負担感の小さい小作業・小課題の教育を、便宜上、「短作文教育」とよんでおく。
 ここに「短作文」と、「作文」の語をつかうのは、穏当でないかのようでもある。が、今は、便宜、この簡小の語を用い、かつは、旧来の「作文」というもののこだわりも、ここでほぐせることを明らかにしたいのである。
 短作文の教育は、作文教育→書く生活の教育の、広い見地から重要視するのである。短作文だけをやらせようというのでも、これさえやらせればよいというのでもない。むろん、長作文も一方でたいせつである。ただ、従来の作文教育では、なんとなく、作文はかなり長いものを書くべきもの、書かせるもの、との通念があった。そのためにも、作文作業は、特別な、負担感の大きい作業だったのである。長作文の不用意な慣行のために、教師も児童生徒たちも、「作文」をあじきなく思うようになった。書くことの自然性はおのずから失われたのである。こうなった作文教育を、本道にもどすために、今は、短作文教育を重視したいと考えるのである。

「長作文も一方でたいせつ」としながらも、「作文教育を、本道にもどすために、今は、短作文教育を重視したい」という藤原さんの言葉を忘れてはならないでしょう。

なお、大内さんは、本書以外の文献に対しても比較検討を行った上で、最終的に「短作文」の授業づくりの意義を、次のように整理しています。

(1)子供たちが喜んで書く「短作文」の題材(実際には、題材というよりも小単元としての性格を備えたものが多いのであるが)が実践事例と共に豊富に開発されてきた。
(2)これらの「短作文」の実践事例は、いずれも短時間(一時間か多くても二時間)扱いであり、指導過程もすっきりしていて分かりやすいものが多い。
(3)開発された題材(実際には、小単元と呼ぶべき性格のものが多い)のネーミングに児童の興味・関心を喚起し学習意欲をそそるような工夫の跡が窺える。
(4)指導事項が明確に示されている事例が多い。
(5)一題材一指導事項という原則を貫いている事例が多い。
(6)アイディアに富んだワークシートなどが数多く開発され、その活用例も具体的に紹介されてきている。
(7)「短作文」の授業づくりが学校での年間行事や児童の日常生活との関わりを考慮して、年間を見通した指導計画の下で行われるようになってきている様子が窺える。
(8)概して、実践事例の報告の仕方が簡潔で分かりやすいものとなってきている。

さらに、次の問題点も指摘しています。

(1)「短作文」授業の目的が「練習作文」の目的である〈作文スキル〉と混同されて、あたかも「短作文」が「長作文」に従属するものであるかのような提案が見受けられる。「短作文」授業を「練習作文」の授業とは切り離して考えていくべきである。そして、基本的には、他の作文授業の目的と同等の目的を有しているものと見なしていくべきである。
(2)「短作文」の題材の機能を子供の側に立った発想から捉えるという点で、なおいっそうの自覚が必要である。特に小学校高学年の題材には、おざなりなものが多い。改善が望まれるところである。そのためには、例えば、〈子供の好奇心をくすぐる題材〉、〈子供の問題意識を刺激する題材〉、〈子供の探究心・追究意欲をそそる題材〉などの開発に努めていく必要があろう。
(3)これまで開発されてきている題材には、確かに従来のそれと比べて「子供が喜ぶ」ようなアイディアに富んだものが多く見られるようになってきた。しかし、これを生かして「子供たちが楽な気分」で「気楽に書」いていけるような〈指導過程〉や〈指導技術〉が十分に開発されているとは言えない現状である。題材の持つ力だけに寄り掛かりすぎているのである。こうした現状を打開するためには、ファックス版の「ワーク」などを安易に使用するのでなく、優れた実践事例を自覚的に追試していくことが必要である。「短作文」が手軽さにのみ目を奪われるような状況を作り出しているとすればこれは問題である。
(4)指導時数が記載されていない実践事例が意外に多い。短時間作文といえども指導時数だけは、必ずどこかに明記すべきである。指導時数が記載されていない授業記録は、授業記録と見なせない。
(5)「短作文」の授業に取り入れられている作文ジャンルとして、目的意識や相手意識を持たせにくいもの、例えば「詩」や「短歌」あるいは「学習記録」などが少なからず存在する。これらのジャンルを取り入れる場合には、子供にとって書くことの楽しさや必然性が感じられるような手立てを講じる必要があろう。また、これらのジャンルは表現形態としても特殊なものが多いので、発達段階を考慮して無理のない形で取り入れていくことにしたい。なお、取り入れる際には、それぞれの表現形態の特質及び書き方について十分な指導がなされるべきである。
(6)個々の実践事例に実践者の氏名が明記されていないものが少なくない。これは望ましいことではない。実践者の氏名を明記して責任の所在を明らかにすべきである。実践者の氏名を明記しないで、「どのネタも、教室の実践を通し、子どもたちが喜んで書くことにとりくんだものばかり」といっても空しい。
(7)「短作文」とは、本来、作文の分量面からみた一種の「条件作文」である。しかし、現状としては、この分量が必ずしも限定されたものとはなっていない。従来の「長作文」との境界があいまいな事例も決して少なくない。これらの中には、作文の分量を限定するよりも指導時数を限定する〈短時間作文〉と目される事例が出現してきている。また、近年の状況として、特に「短作文」とは断らなくても比較的短い分量での作文を書かせている事例を見出すことも少なくない。したがって、今後は、何かと誤解されることの多い(例えば、「練習作文」との混同、あるいは、「作文の基礎力の養成」と称して「短作文」が「長作文」に従属するものであるかのごとき誤解など)「短作文」というネーミングを敢えて行わなくてもよいのではないかと判断される。

「短作文」全般に対する大内さんの整理を手がかりにしながら、膨大な先行文献の一つ一つに目を通していきたいものです。

はじめに
国語教育の技術と精神
 ‘科学・技術’
 ほんとうの教育技術
 技術と精神
 国語教育の精神
現実を見る目—国語教育の開拓—
 現実熟視の国語教育
 現実を見る目をどのようにして養うか
 現実を見つめる国語教育
 現実直視と環境整理
 方言の現実
考えさせる国語教育
 機械的な教育
 技術主義的世相
 考えさせる教育
 考える生活を
 ことばで考える ことばで考えさせる
 考えさせる国語教育の一要点
 考えさせる国語指導のじっさい
 ことばを見つめさせる
論理的思考と国語教育
 論理的思考の教育
 論理的思考
 今日の国語教育
 論理的思考と国語教育
 つねに論理的指導方法を
 詩の読解指導の論理的方法
 論理的方法の一般性
 論理的思考の国語教育
愛情の国語教育
 愛情
 愛情・誠実
 教育技術への愛情
 技術を救うもの
 人格の国語教育
国語教育での「問い」
 教育方法としての「問い」
 問いの原則
 問いの表現
 教室参観→「問いのことば」
「書く生活」の教育
 書く生活
 作文教育の振興
 書くことの意義—書くとはどうすることか—
 「書く生活」の教育
 「書くこと」の自然性を
 「観念」教育
 短作文教育—「書くこと」の小作業・小課題の教育
 短作文教育—a.一語作文—
 短作文教育—題目づけ—
 短作文教育—b.一文作文—
 短作文教育—c.二文作文—
 短作文教育—d.三文作文—
 短作文教育—e.四作文—
 短作文教育—f.「一章」作文—
 短作文教育—g.二百字限定作文—
 短作文教育の機会
 短作文教育の愛情
 長作文の教育
 長作文の中心点
 長作文教育での構想メモ
 長作文の重点指導
 作文教育、「『書く生活』の教育」のために
読みの深化過程
 読みかた教育の力の入れどころ
 深化の一般公式
 文学教育の「むずかしさ過剰」
 論理的方法
 読解深化三段階の例説
 素材読み
 文法読み
 文学教育と文法読み
 表現読み
 「読解深化」指導と教材・教科書
 読解指導と段落—段落の処理—
 読みこんで、読みあかす
「聞く力」の養成のむずかしさ
 聞く生活
 聞くとは
 「聴き方について」のむかしの教え
 聞くことの指導
 「聞くこと」の深化方式
 聞くことの教育のむずかしさ
話すことばはなかなか見つからない—そういう「話すこと」の教育—
 「話すことの教育」の考えかた
 ことばがない
 合理的な談話活動
 話すために、考えさせる
 話しことばの音声
 話す生活の深化
 話すこと書くこと
 話すことの教育
国語教育の機能
国語生活の基本能力
国語教師の国語教育研究
おわりに
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『課題条件法による作文指導 小学校編』 [書籍]


課題条件法による作文指導〈小学校編〉 (楽しい国語の授業)

課題条件法による作文指導〈小学校編〉 (楽しい国語の授業)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 明治図書出版
  • 発売日: 1990/08
  • メディア: 単行本


大内善一さんは『作文授業づくりの到達点と課題』(東京書籍)の「まえがき」において、「作文授業づくりに関してのケース・スタディ」の作業を行う必要性を述べています。『思考を鍛える作文授業づくり』(明治図書)でも行われた検討作業を踏まえて、少し時代をさかのぼり、昭和四十年代以降の実践を取り上げています。

さて、大内さんは『作文授業づくりの到達点と課題』「第Ⅴ章 課題条件の設定による作文授業づくり」第二節において「課題条件法」を取り上げています。これは「文章表現を成立させる要素や文章を書くときのさまざまな制約を『条件』として取り出し、これをはっきりと自覚させ、意識させていく指導の方法」です。巴野欣一さんを中心として、奈良国語教育実践研究会によって提案された方法ですが、昭和三十年初期から30年以上にわたる研究を踏まえたものです。「条件」については、何度か修正を加えた後、次のような項目が示されています。

[1]目的
[2]立場
[3]相手
[4]内容・材料(主題・取材)
  1 主題
  2 取材
[5]構成
[6]叙述・文体
  1 語句
  2 文
  3 文章
  4 叙述のタイプ(叙法)
  5 文体
  6 修辞法(レトリック)
[7]表記
  1 文字・かなづかい・送りがな
  2 符号
  3 書き方・用紙の使い方
[8]分量

これらの項目にしたがって、小学校から中学校の全学年にわたって「年間指導計画」が提示されるという具合に、全体として非常に組織的な研究になっています。大内さんは、次の意義を挙げています。

(1)長期にわたる組織的・実践実証的研究によって「書くことの条件項目」を洗い出し、作文指導計画を作成するための指導事項を網羅的に抽出した。
(2)「書くことの条件項目」による「指導事項表」を作成し、これに基づいて全学年にわたる「年間指導計画」を組織的に作成した。作文年間指導計画の一つの参考として有意義である。

ただし、個々の実践を検討していくと、いくつかの問題点も指摘されています。たとえば、大内さんは「[4]内容・材料(主題・取材)」「[6]叙述・文体」の項目を取り上げています。「『内容』という概念があいまい」なため、「作文の素材・題材」だけでなく、「叙述・文体」も含まれてしまっている例を挙げています。

この点も含めて、大内さんは次の問題点も指摘しています。

(1)設定された八つの「課題条件」の中には、例えば「(2)立場」「(4)内容・材料」「(7)表記」などのように概念がややあいまいなために、「年間指導計画」作成に生かす際に不確かな捉え方が生じている。(2)や(7)の項目などは精選していってもよい。
(2)「年間指導計画」については、「単元計画」との違いを明確に認識して、あまり煩雑なものにしないような配慮が必要である。
(3)「課題条件」を学習者に意識させていくための指導過程・方法、手立てがなお十分には解明されていない。指導に際しての具体的な教材の開発も必要であり、今後の課題として残されている。
(4)「課題条件」が実際の指導にどこまで有効に生かせているかを報告する授業記録の記述方法の在り方も、今後に残されている課題と言える。

特に、問題点(4)の「授業記録」については、「指導言の形で個々の『課題条件』を踏まえただけの形となっている」点が指摘されています。さらに、「実際の指導では、個々の『課題条件』を踏まえさせていくための指導上の手立てが具体的に講じられなければならない」「手立てが記録からも読み取れるように記載されていることが望ましい」と述べています。つまり、「『課題条件』を実際の指導に際して児童にどのように意識させていくかという問題であり、その方法をどのように報告していくかという授業記録の問題でもある」とまとめています。作文における「教科内容」だけでなく、「学習者」の問題も考えていくためには、「授業記録」の書き方を考えていく必要があると思われます。

なお、本書「小学校編」の他に『課題条件法による作文指導 中学校編』(明治図書)も刊行されています。


はじめに
第Ⅰ章 新教育課程と作文指導
第Ⅱ章 課題条件作文の指導
 一 作文指導法改造の必要
  1 学習指導要領での作文指導強化の推移
  2 作文指導——何が問題か
 二 文章表現の条件に基づく課題条件法
  1 文章表現の条件
  2 五十嵐力博士「六何」の論ほかの条件論
  3 課題条件設定のための基本事項一覧表
  4 条件項目による指導事項表(技能表)
  5 書くことの場の設定と条件作文の指導
第Ⅲ章 課題条件作文の題材開発
 一 小学生の題材調査
 二 課題条件作文の題材選定
第Ⅳ章 課題条件作文の年間指導計画
 一 年間指導計画の作成
 二 年間指導計画編成の方針
  ●一年・課題条件作文年間指導計画
  ●二年・課題条件作文年間指導計画
  ●三年・課題条件作文年間指導計画
  ●四年・課題条件作文年間指導計画
  ●五年・課題条件作文年間指導計画
  ●六年・課題条件作文年間指導計画
第Ⅴ章 課題条件作文指導の実践
 一 授業の計画と展開
 二 書く喜びをもたせる作文指導——低学年の作文活動
  生活科の中に題材を求めて
   1 知らせたいことを書く(一年)
    課題 かたつむりとあそんだよ(生活文)
   2 経験したことを順序よく書く(一年)
    課題 かみひこうき(生活文)
   3 見たり聞いたりしたことを書く(一年)
    課題 うまれてからのことを「まきもの」にしよう(記録文)
  学校行事などの中に題材を求めて
   1 したことを思い出し、順序をたどって書く(一年)
    課題 たなばたしゅうかい(生活文)
   2 したことを知らせる文章を書く(一年)
    課題 うちのまめまき(生活文)
 三 題材の開発と指導法の工夫——中・高学年の作文活動
  理科・社会科などの学習活動から題材を求めて
   1 見学したことをまとめて書く
    課題 くつ下工場を見学して(見学記録文)
   2 手紙の書き方を知る(三年)
    課題 祖父母に聞く(手紙文)
   3 調べたことをわかりやすく書く(三年)
    課題 移り変わる私たちの町(報告文)
   4 学習してわかったことを書く(五年)
    課題 燃えるのはなぜか(説明文)
  特別活動の中から題材を求めて
   1 感動を効果的に書く(五年)
    課題 初めての田植え(生活文)
   2 体験を伝え、下級生によびかけるために書く(五年)
     ——学級担任外教師による指導
    課題 続けよう菊のプレゼントを(依頼文)
   3 自分の気持ちをくわしく書く(六年)
    課題 知りたいなあ、みんなの気持ち(生活文)
   4 自分の意見をわかりやすく書く(六年)
    課題 みんなで考えよう(意見文)
  読書・物語作りの活動を通して
   1 お話を作る(二年)
    課題 森のなかま(創作文)
   2 創作文の書き方を知る(三年)
    課題 絵巻物を作ろう(創作文)
   3 読書感想文を書こう(四年)
    課題 みんなにすすめるこの一冊(感想文)
   4 読んだ本の内容を紹介する(五年)
    課題 私の読んだ本(感想文)〔椋鳩十『孤島の野犬』「王者の座」より〕
   5 想像を豊かにして物語を書く(六年)
    課題 もしもこんなことが起こったら(創作文)
 四 同一題材「運動会」をもとにした作文指導
   ——同一題材「運動会」で取り組む作文活動
   1 経験したことを順序をたどって書く(一年)
    課題 うんどうかい(生活文)
   2 心に残っていることをくわしく書く(三年)
    課題 がんばったぞ(生活文)
   3 心をこめて招待の手紙を書く(六年)
    課題 ぜひ見にきてください(手紙文)
あとがき
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『条件作文と客観評価』 [書籍]


条件作文と客観評価 (1967年)

条件作文と客観評価 (1967年)

  • 作者: 和多 史雄
  • 出版社/メーカー: 謙光社
  • 発売日: 1967
  • メディア: -


大内善一さんは『作文授業づくりの到達点と課題』(東京書籍)の「まえがき」において、「作文授業づくりに関してのケース・スタディ」の作業を行う必要性を述べています。『思考を鍛える作文授業づくり』(明治図書)でも行われた検討作業を踏まえて、少し時代をさかのぼり、昭和四十年代以降の実践を取り上げています。

さて、大内さんは『作文授業づくりの到達点と課題』「第Ⅴ章 課題条件の設定による作文授業づくり」第一節において「条件作文」を取り上げています。本書の著者、和多史雄さんは「作文の基礎力の育成」「作文の系統的指導」「作文の客観評価」という三つの方向から「条件作文」を提唱しています。このような「条件作文」の考え方に対して、大内さんは「短作文を包む概念」と位置づけています。

さて、「条件作文」の内容・方法を検討するに当たって、大内さんは次の「十九例」を示しています。

 1 短文練習
 2 「熟語作り」と関連させて
 3 短文から次第に長文へ
 4 「ことばのきまり」と関連させて
 5 「ことばづかい」と関連して
 6 詩の指導と関連して
 7 句読点のつけ方、文章の続け方
 8 表記法と原稿用紙の使い方
 9 説明調で
10 意見文を書く
11 比較文
12 短歌・俳句と関連して
13 漢詩と関連して、訳詩づくり
14 説明文と文末表現
15 伝記を書く
16 会話を書く
17 昔話と関連して
18 論文を書く
19 経過を書く、その他

「全体として短作文から次第に長作文へ」「基礎的なものから応用的なものへ配列されている」と指摘されています。そのような意識で見てみると、作文の長さによる考察が可能になります。

たとえば、大内さんは〈内容・材料〉という条件に着目した考察を行っています。「短文作りの場合、目的自体が学習者の書くことの必要性に根ざしたものとなっていないので、材料とする語句や熟語を選ぶ際に、学習者の興味・関心をひくようなものを選ぶように配慮していく」必要性が指摘されています。また、「中程度以上の長さの作文を書かせる問題例の場合は、『尊敬する人物』『身近なできごと』『友人』『好きな教科』などと、学習者が興味を持つことができるような題材・内容が設定されていて好ましい」と評価されています。「短文を書くことは、書くことの負担感の軽減に通じるところがある」ものの、「書きやすいからといって、無目的に多作させることが望ましくないこともある」というのです。

大内さんは最終的に次の意義を挙げています。

(1)課題条件を設定した作文授業づくりとして、この後に出現してくる短作文の授業づくりに関する先進的な提案となっている。
(2)十九の内容項目にしたがって提示された総数四三の問題例は、作文教材として生徒の作文活動を活性化させるだけの機能を有している。また、作文教材の開発事例としても参考になる。

しかし、次の問題点も指摘しています。

(1)〈条件〉の種類及び性格が必ずしも整理された形では示されていない。そのために、具体的な問題例が開発されているにもかかわらず、その中でどんな作文技能を育成しようとしているのかがやや理解しにくい。
(2)一つの問題例の中に複数の〈条件〉が含まれているのだが、それらが必ずしも意識的に設定されていないために〈条件〉相互の関係が捉えにくい。「条件作文」を効果的に行う上からの問題点となる。
(3)「条件作文」は必ずしも「練習作文」と同一ではないのだが、その違いが意識的にはなされていない。そのために、「作文の基礎力の育成」としての「練習作文」が断片的に混じってきている。

作文の長さ(規模)に応じて、いかなる〈条件〉を設定していくべきか、大内さんの整理が考えるヒントになりそうです。

序文 八木橋雄次郎
自序
第一部 作文の評価について
 Ⅰ 評価に対する考え方
  1、「評価」とは何か
  2、教育的評価
  3、個人評価と相対評価
  4、作文コンクールと評価
  5、文芸的評価と生活的評価
  6、テストと評価
  7、教師の評価と、児童・生徒の評価
  8、総合的・主観的評価と分析的・客観的評価
  9、評価と評語
 Ⅱ 評価の方法と種類
  1、自己評価
  2、相互評価
  3、共同評価
  4、グループ評価
 Ⅲ 評価の観点
  1、「国語教育辞典」より
  2、「生活綴方事典」より
  3、中沢政夫氏の説
  4、森岡健二氏の説
  5、過程主義の重視
 Ⅳ 小・中学校における書くことの観点
  1、小学校の部
   ア、目標について
   イ、指導事項の系統表
  2、中学校の部
   ア、全体目標について
   イ、学年目標について
   ウ、各学年の指導事項の系統とその細分化
   エ、評価の観点
第二部 客観評価について
  1、「手紙」の評価
  2、「あらすじ」や「構成」の評価
  3、「研究報告」の評価
  4、「伝記文」の評価
  5、「説明文」の評価
  6、「夏休みの課題」と関連して
  7、作文の基礎能力
  8、身辺のできごとに取材した作文
第三部 条件作文について
  1、短文練習
  2、「熟語作り」と関連させて
  3、短文から次第に長文へ
  4、「ことばのきまり」と関連させて
  5、「ことばづかい」と関連して
  6、詩の指導と関連して
  7、句読点のつけ方、文章の続け方
  8、表記法と原稿用紙の使い方
  9、説明調で
 10、意見文を書く
 11、比較文
 12、短歌・俳句と関連して
 13、漢詩と関連して、訳詩づくり
 14、説明文と文末表現
 15、伝記を書く
 16、会話を書く
 17、昔話と関連して
 18、論文を書く
 19、経過を書く、その他
あとがき
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『小学校作文の単元』 [書籍]


小学校作文の単元―個人文集への誘い (国語教育叢書)

小学校作文の単元―個人文集への誘い (国語教育叢書)

  • 作者: 白石 寿文
  • 出版社/メーカー: 教育出版センター
  • 発売日: 1989/08
  • メディア: 単行本


大内善一さんは『作文授業づくりの到達点と課題』(東京書籍)の「まえがき」において、「作文授業づくりに関してのケース・スタディ」の作業を行う必要性を述べています。『思考を鍛える作文授業づくり』(明治図書)でも行われた検討作業を踏まえて、少し時代をさかのぼり、昭和四十年代以降の実践を取り上げています。

さて、大内さんは『作文授業づくりの到達点と課題』「第Ⅳ章 短時間構成の小単元による作文授業づくり」第二節において本書を取り上げています。本書の特徴は、「まえがき」によれば、「一学期に大きく一まとまりになる大単元」を立て、「その大単元は、幾つかの小単元」によって構成し、これらの小単元から生み出された一つ一つの作品をファイルして「世界でたった一冊の『個人文集』になるよう組織」していくところにあるとされています。本書の副題が「個人文集への誘い」となっている理由が、よく分かります。「各学年に毎学期一冊ずつの個人文集が制作されていくというシステム」は、子どもたちにとっても分かりやすく、達成感が味わえると思われます。

さて、その「個人文集」のテーマですが、下記に示した本書の目次で、その実際を知ることができます。その中から、大内さんは三年生の二学期の大単元「ちびっこ作家」を取り上げて、次の小単元を紹介しています。

1 ぼくの発明しためがね
2 ねずみになって
3 自然を見つめて
4 詩を書こう
5 ぼくとわたしの五大ニュース
6 大人になりたい
7 ロボットはいいな
8 自転車が馬になっちゃった
9 先生のだんな(おく)さんへ

これら一つ一つの小単元において、「単元名」に続いて「指導ポイント」「指導ステップ」「ワークシート」がコンパクトにまとめられています。それぞれの項目に対して、大内さんは「指導意識を全面に出さないで、子供サイドに立って子供が親しみやすい」単元名、「読んで分かるように指導事項と題材とが一体化して目標化した形で示されている」指導ポイント、「指導過程・方法が簡略に述べられている」指導ステップ、「手作りのもので、楽しく作文活動ができるように工夫された」ワークシートなどの分析を加えています。そして、「こうした授業記録の形式は、小単元による作文授業づくりのための提案方法として行き届いたものとなっている」と評価しています。

以上の点も含めて、大内さんは最終的に次の意義を挙げています。

(1)学期ごとの大単元のもとにいくつかの短時間構成の小単元を配して、教科書作文単元を補完し得る提案としている。また、指導の成果が学期ごとに「個人文集」としてまとめられることで、作文学習の継続性と作文学習意欲の喚起とが図られている。
(2)個々の小単元の単元名が、指導意識を前面に出さないで、子供サイドに立って、子供が親しみやすいようにつけられている。
(3)個々の小単元で取り上げられている作文ジャンルの多くは、子供が書く目的や相手を自覚しやすいものとなっている。しかも、その種類は多彩である。
(4)子供の生活実態を考慮して、空想・想像的な作文ジャンルを数多く取り上げたことは、以後の作文授業づくりに与えた影響から見ても意義深いものがある。
(5)指導のステップが段階を踏んでしかも簡潔に示されている点も、これまでの実践提案にはあまり見られないような特色の一つである。
(6)各小単元ごとによく工夫されたワークシートが必ず示されていて、提案そのものを実際的なものとしている。作文教材開発方法への一つの道を切り開いたものと見なすことができる。

さらに、次の問題点も指摘しています。

(1)お決まりの「書き出し」方を禁止させるといった点が一つの研究課題として提示されていたが、実際の提案の中では、具体的にその指導の手立てなどが十分には示されていなかった。
(2)短時間構成の小単元とはいえ、指導時間を明記しておくべきである。

問題点に比べて、数多くの意義が列挙されている点からも、大内さんが本書の実践を高く評価していることがうかがえます。「学期ごとに『個人文集』としてまとめられる」ためには、どのくらいの時間数をかけて「短時間構成の小単元」を計画すべきか、考えてみたいものです。

まえがき
Ⅰ 作文単元設定の視点と体系化
Ⅱ 右脳的作文のすすめ—創造的作文の実践—
Ⅲ 指導の実際(一年生)
 ・一学期 わたしは一ねんせい
 ・二学期 えをみてかく
 ・三学期 あの人この人へ
Ⅳ 指導の実際(二年生)
 ・一学期 わたしの家
 ・二学期 絵本をつくろう
 ・三学期 なかよしになろう
Ⅴ 指導の実際(三年生)
 ・一学期 わたしのクラス
 ・二学期 ちびっこ作家
 ・三学期 まわりを見つめて
Ⅵ 指導の実際(四年生)
 ・一学期 あの日あの時
 ・二学期 ミニ新聞を作ろう
 ・三学期 わたしのアルバム
Ⅶ 指導の実際(五年生)
 ・一学期 わたしの学校
 ・二学期 わたしの旅行記
 ・三学期 新聞を読んで
Ⅷ 指導の実際(六年生)
 ・一学期 自分を見つめて
 ・二学期 たった一冊の雑誌
 ・三学期 卒業に当たって
執筆者紹介
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『言語生活的作文の指導シート』 [書籍]


言語生活的作文の指導シート

言語生活的作文の指導シート

  • 作者: 高森 邦明
  • 出版社/メーカー: 学芸図書
  • 発売日: 1988/12
  • メディア: 単行本


大内善一さんは『作文授業づくりの到達点と課題』(東京書籍)の「まえがき」において、「作文授業づくりに関してのケース・スタディ」の作業を行う必要性を述べています。『思考を鍛える作文授業づくり』(明治図書)でも行われた検討作業を踏まえて、少し時代をさかのぼり、昭和四十年代以降の実践を取り上げています。

さて、大内さんは『作文授業づくりの到達点と課題』「第Ⅳ章 短時間構成の小単元による作文授業づくり」第一節において「言語生活的作文」を取り上げています。高森邦明さんによって提唱された「言語生活的作文」は『児童文学と国語教育』(一九七六年、鳩の森書房)、『あらゆる機会をとらえる作文指導』(一九八〇年二月、明治図書)などの論考を経て、「次の三書に余すところなく述べられている」と大内さんは紹介しています。

(1)高森邦明著『作文教育論2 言語生活的作文の指導』一九八四年六月 文化書房博文社
(2)高森邦明著『作文教育論3 言語生活的作文の実践研究』一九八四年十一月 文化書房博文社
(3)高森邦明著『言語生活的作文の指導シート』一九八八年十二月 学芸図書

大内さんは文献(1)『作文教育論2 言語生活的作文の指導』に対して、「文献(2)と(3)のような実践事例研究と『指導シート』の開発とを行って、理論と実践とを結びつける試みがなされている」と位置づけています。そして、「一研究者がここまで本格的に理論と実践との橋渡しを行うということは、これまで一部の例外を除いては極めて希有なこと」「我々は高森のこの研究から、研究者と実践者とを問わず、作文指導の在り方を理論化するための手順と方法とを学び取ることができる」と評価しています。

それでは、高森さんの実践事例研究に対して、大内さんがどのような考察を行っているか見てみましょう。

なお、「『言語生活的作文の指導』に関する意義と考察点については、提唱者である高森自身が研究者としての立場から綿密に行っている」ため、大内さんは「国語科作文授業づくりとしての意義と問題点を考察するという方法」ではなく、「作文授業づくりに生かせるもの」を取り出すのみに留めています。そこで、以下、本書に関連して大内さんが考察した「作文授業づくりに生かせるもの」を引用しておきます。

    (3)作文教材としての「指導シート」の開発
 高森邦明の「言語生活的作文の指導」では、文献(3)の『言語生活的作文の指導シート』なるものが開発されている。この「指導シート」の特質について、高森は、「内容によっては、直接複写機にかけて拡大して、生徒の『ワークシート』として用いられるほかに、指導する教師の指導の手引きとしても用いられる」(「はしがき」)と述べている。戦前の綴り方教育の中で作成されていた「綴り方教授細目」や「文材暦」と同じ役割を果たせるものを目指して作成されたものであるとも述べている。
 大きな分類としては、「Ⅰ 言葉あそび・ひらめきあそび」「Ⅱ 歌あそび・パロディあそび」「Ⅲ 文あそび・会話あそび」「Ⅳ 歌づくり・詩づくり」「Ⅴ じてんづくり・新聞づくり」「Ⅵ 授業で書く文」「Ⅶ 学級活動・学校生活で書く文」「Ⅷ さまざまな表現」から成っている。
 これらの下に、一頁に一つずつ、例えば、次のような「指導シート」が紹介されている。

 6 コピーづくり
 今日、テレビや新聞などで品物を宣伝・広告するための言葉を「コピー」といっている。昔から「だまって座ればぴたりと当たる」と言われていたのは「占い」のコピーであり、「ちりも積もれば山となる」というのは、倹約をすすめるコピーであった。また「くりよりうまい十三里」というのは、「やきいも」のコピーである。これをまねて、食物のコピーを作るとすると、例えば、
   人間のような表情がある=はがいも
   しんから白いはだ=たまねぎ
   元気ないがくり坊主=くり
   話はこの一ぱいから=お茶
   香りを飲むのです=コーヒー
   白いぬくもりがいい=ミルク
 これらをまねて、どんなふうにすれば人がそのものに興味を持ってくれるかを考えて、次の学習用具のコピーを作ってみよう。
   ・えんぴつ=
   ・けしゴム=
   ・ノート=          (八五頁)

 右の事例からも分かるように、この「指導シート」には、〈指導言〉や〈参考文〉、そして、〈実作のための課題〉などが示されている。これは、単なる「ワークシート」ではなく、明らかに作文教材としての機能を備えたものである。
 これらの「指導シート」は、いずれも大単元の作文指導における教材と異なって、一時間以内での短時間における小単元での使用が可能なものばかりである。それゆえ、一単位時間ごとの作文授業での運用が可能である。
 したがって、これらの「指導シート」は、運用のしやすさという点からも短時間構成の作文授業において使用される作文教材の一つのモデルともなりうる特質を備えたものと見なすことができる。

このような「指導シート」が「一頁に一つずつ」、全部で140も示されています。それらの内容は目次でもうかがえますが、高森さん自身による「はじめに—本書の使い方—」でも、その概要が次のように説明されています。多数のアイデアの中から、授業者の目的や意図に応じて上手に活用していきたいものです。

 本書は、全体が八章にまとめられている。そのうち、初めの三章、「言葉あそび」「歌あそび」「文あそび」には、言葉遊び的要素の強いものが集められている。言葉遊び的というのは、狭い意味のもので、広い意味で言えば、本書全体がそうであり、また極論すれば作文そのものが、私は、言葉遊びを離れるものではないという認識を持っている。ただし、漢字や語彙の練習そのものを目的とした言葉遊びは、言葉遊びの本質を離れると言わなくてはならない。遊びは遊びであって、これが練習に変えられると、遊びにはならない。言葉を巡って、さまざまに「遊べる」のが、人間の人間らしいところであって、その遊びが、そのまま言葉の教育となる。
 次の第四・五章、「歌づくり・詩づくり」「じてんづくり・新聞づくり」には、遊びの要素も多いが、国語科内外の授業時間や学級活動の時間などに、具体的な「作る活動」として見られるものを集めた。ただし、この「作る」は「文章を作る」のではなく、言葉が役立っている表現物を作るのである。従って、この表現には、音楽、絵、マンガ、イラスト、デザイン等、さまざまなメディアが取り入れられる。これは、最近にわかに進歩してきたコピー機器を用いて可能になっている。ここでは「原稿用紙のマスメに書く」ということは、ほとんど見られない。
 そのようなマルチ・メディアをもって成立する、いわゆる言語生活的作文の多くの形が現れるのが、第六・七章、「授業で書く文」「学級活動・学校生活で書く文」である。ここで書く文は、国語科作文の授業で書く文種的文章、文章作品ではない(「文章」というと「作品」をイメージするが、「文」というと必ずしもそうではない)。作文の授業では、ごく限られた文しか書かれないが、その他の活動では、きわめて多様な形の文が書かれている。これに配慮しないのは、読書を軽視して読解を重視する学校国語教育の同類の傾向と言ってもよい。なお、ここに入れたもの以外にも授業や学級活動等で書かれる例は多く、それをここに位置づけても問題はない。
 最後の第八章「さまざまな表現」は、以上に収めることもできたが、これが現れた特殊性によって、一章にまとめた。すなわち、これらは文集やカード、ノート類に見られたものである。ただし、この文章やカード、ノート等も授業や学級活動等において計画されたものには違いない。

はしがき
はじめに—本書の使い方—
Ⅰ 言葉あそび・ひらめきあそび
 一 言葉あそびと文づくり
  1 目ことば入り文づくり
  2 頭ことば入り文づくり
  3 漢字せんすの「かざり文」づくり
  4 漢字かさの「のれん文」づくり
  5 漢字の体につける頭と足づくり
 二 リレーとしりとり
  1 単語イメージリレー
  2 単語そろえリレー
  3 文イメージリレー
  4 話のリレー
  5 しりとりあそび
  6 しりとり語
 三 ひらめきあそび
  1 連想あそび
  2 連想語あそび
  3 ひらめき語あそび
  4 カバン語あそび
  5 年賀あそび
Ⅱ 歌あそび・パロディあそび
 一 あそび歌・まなび歌
  1 じゃんけん歌
  2 かぞえ歌
  3 あいうえお歌
  4 漢字歌
 二 おり句・ごろ合せ・上句づけ
  1 名前のおり句
  2 名前の漢字読みこみ句
  3 電話番号おり句歌
  4 電話番号ごろ合せ
  5 いいわけおり句
  6 いいわけ上句づけ
 三 パロディあそび
  1 パロディお経
  2 パロディ俳句
  3 パロディ詩
  4 パロディことわざ
  5 パロディ「あのね」
Ⅲ 文あそび・会話あそび
 一 数漢英字の文あそび
  1 復文あそび
  2 ABC文体
  3 数字ことば
  4 数字の詩
 二 会話とひとりごと
  1 ごろ合せ小ばなし
  2 むかしばなし小ばなし
  3 ゆかいな会話
  4 しゃれた会話
  5 「言葉のうらおもて」コント
  6 片道電話
  7 電話道案内
  8 電話スケッチ
  9 動物ひとりごと
 10 人間ひとりごと
 三 クイズ、なぞなぞ
  1 クイズ
  2 なぞなぞ
Ⅳ 歌づくり・詩づくり
 一 歌づくり
  1 学級歌
  2 家業の歌
  3 「おかげです」歌
  4 「ああおそろしい」の歌
 二 詩づくり
  1 一行詩
  2 三行詩
  3 五行詩
  4 連句
  5 「ものはづくし」の詩
  6 コピーづくり
  7 毛筆で書いた短詩
 三 音をとらえる
  1 水道の音
  2 自動車の音
  3 雨風の音
  4 色の音・音の色
  5 朝夕の音
  6 音づくり
 四 音の詩
  1 自然の音の詩
  2 波の音の詩
  3 心ぞうの音の詩
  4 動物のいびきの詩
Ⅴ じてんづくり・新聞づくり
 一 じてんづくり
  1 虫語じてん
  2 地震じてん
  3 ありじてん
  4 マット運動くふうじてん
  5 教科書漢字じてん
  6 名前漢字じてん
 二 新聞づくり
  1 ありじごく新聞
  2 コスモス新聞
  3 自己新聞1「私の大事件」
  4 自己新聞2「私の誕生」
  5 自己新聞3「私の人生計画」
  6 日刊学級新聞
  7 旬刊学級新聞
 三 学級新聞コラム
  1 友達ウォッチング
  2 あたたかな話
  3 さわやかな話
  4 「親切」の言葉
  5 私のすきな言葉
  6 季節の言葉
  7 わたしたんけん
Ⅵ 授業で書く文
 一 カルタづくり
  1 あいうえおカルタ
  2 漢字カルタ
  3 方言カルタ
  4 動物カルタ・植物カルタ
  5 あそびカルタ・偉人カルタ
 二 国語学習の文
  1 イメージ化文
  2 アドリブ文
  3 日がわり学習日誌
  4 自分が作った格言
  5 方言で書いた文集
  6 格言マンガ
  7 マンガを見て話を作る
 三 読書の文
  1 本の帯
  2 本のしおり
  3 読書カード
  4 読書の記録
  5 読書週間ポスター「私のすすめる本」
  6 読書表彰状
  7 おすすめする言葉
Ⅶ 学級活動・学校生活で書く文
 一 学級活動の文
  1 学級憲法
  2 学級標語
  3 決意表
  4 私の年間計画表
  5 私の今月の目標
  6 自己紹介ポスター
  7 標語カレンダー
  8 学級クリスマス会提案書
  9 クリスマス・メッセージ
 10 家庭訪問道案内
 11 運動会の案内状
 二 日常生活の文
  1 へたに書くはがき
  2 気楽なはがき
  3 気楽な手紙
  4 気楽な日記
  5 たのしい年賀状
 三 学校生活の文
  1 かざり言葉づけお父さんしょうかい
  2 よびかけ
  3 校外学習のしおり文集
  4 自分史「生いたちの記」
Ⅷ さまざまな表現
 一 ひとこと集
  1 ほんね一言集
  2 一言アンケート文集
  3 風船に託した一言
  4 一言感想
  5 感想俳句
 二 ものにそえる詩文
  1 絵にそえる詩文
  2 俳句と自評文
  3 絵や作品の自評文
  4 前書きと俳句
 三 出来事と感動をひろう
  1 出来事カード
  2 一日一回感動をひろうカード
  3 感情語表現例文集
  4 「感情ノート」「心のノート」
あとがき
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『作文教育論3 言語生活的作文の実践研究』 [書籍]


作文教育論〈3〉言語生活的作文の実践研究 (1984年)

作文教育論〈3〉言語生活的作文の実践研究 (1984年)

  • 作者: 高森 邦明
  • 出版社/メーカー: 文化書房博文社
  • 発売日: 1984/11
  • メディア: -


大内善一さんは『作文授業づくりの到達点と課題』(東京書籍)の「まえがき」において、「作文授業づくりに関してのケース・スタディ」の作業を行う必要性を述べています。『思考を鍛える作文授業づくり』(明治図書)でも行われた検討作業を踏まえて、少し時代をさかのぼり、昭和四十年代以降の実践を取り上げています。

さて、大内さんは『作文授業づくりの到達点と課題』「第Ⅳ章 短時間構成の小単元による作文授業づくり」第一節において「言語生活的作文」を取り上げています。高森邦明さんによって提唱された「言語生活的作文」は『児童文学と国語教育』(一九七六年、鳩の森書房)、『あらゆる機会をとらえる作文指導』(一九八〇年二月、明治図書)などの論考を経て、「次の三書に余すところなく述べられている」と大内さんは紹介しています。

(1)高森邦明著『作文教育論2 言語生活的作文の指導』一九八四年六月 文化書房博文社
(2)高森邦明著『作文教育論3 言語生活的作文の実践研究』一九八四年十一月 文化書房博文社
(3)高森邦明著『言語生活的作文の指導シート』一九八八年十二月 学芸図書

大内さんは文献(1)『作文教育論2 言語生活的作文の指導』に対して、「文献(2)と(3)のような実践事例研究と『指導シート』の開発とを行って、理論と実践とを結びつける試みがなされている」と位置づけています。そして、「一研究者がここまで本格的に理論と実践との橋渡しを行うということは、これまで一部の例外を除いては極めて希有なこと」「我々は高森のこの研究から、研究者と実践者とを問わず、作文指導の在り方を理論化するための手順と方法とを学び取ることができる」と評価しています。

それでは、高森さんの実践事例研究に対して、大内さんがどのような考察を行っているか見てみましょう。

なお、「『言語生活的作文の指導』に関する意義と考察点については、提唱者である高森自身が研究者としての立場から綿密に行っている」ため、大内さんは「国語科作文授業づくりとしての意義と問題点を考察するという方法」ではなく、「作文授業づくりに生かせるもの」を取り出すのみに留めています。そこで、以下、本書に関連して大内さんが考察した「作文授業づくりに生かせるもの」を引用して、まとめにしておきます。

    (2)「ミニ単元」の活用による短時間作文の指導
 文献(2)の『作文教育論3 言語生活的作文の実践研究』の中に、「ミニ単元を中心にした言語生活的作文の計画と実践」という章がある。ここで分析されている実践事例に「ことばによるスケッチ12カ月」というものがある。五年生を対象に行われた実践であり、指導者の野口和子教諭は、この単元設定の趣旨を次のように説明している。

 朝自習の15分などの短時間を一定期間継続して使う。書き慣れると同時に表現のくふうをさせることをねらっている。校舎内外、通学区域などからとらえる四季おりおりの姿、教室環境のプランタや鉢植えの植物、飼育動物などを計画的に「ことばによるスケッチ」することにより、客観的な描写のしかたを見につける。視、聴、臭、触、味覚などのさまざまな面からとらえ、表現のくふうをする。また、ことばを選び、吟味し、ひろげていくように配慮する。(一七三〜一七四頁)

 実際に設定された単元名として「春にひろう—みあげる・ふれる・かおる—」「虫シリーズ—身の回りの虫をスケッチしよう—」「雨の音がきこえる」「給食はなにかしら」「植物シリーズ」「窓から見える風景あれこれ」「私をみつめて—心のスケッチ」「私の写した宇宙」「雪—白銀の世界」「野口先生」などがある。
 高森は、これらのミニ単元を分析して「生活単元的特色と練習単元的特色とを同時に持たせ、ここで、大単元において組めなかった練習的であり、生活的であるもの、例えば、作文や語句・語彙・漢字などを主に短時間扱いで編成していこう」とするものであると捉えている。
 なお、右に述べられている「短時間」とは、指導者によれば、「15分を一単位」として、単元の計画に沿って、例えば「『15分×2』と『15分』と『15分×3』と三回に組む(つまり、30分、15分、45分の三回)」という具合で設定された時間のことである。
 したがって、高森も、この時間の設定の仕方からみて、当初考えられていた「朝自習の15分」といった時間の使い方から「実際にはかなり修正された形」で行われるようになったものと判断している。
 このような弾力的な時間設定は、国語科作文での授業づくりにおいても十分に活用できるものである。
 ところで、この章には、もう一つ「言葉遊び的作文の実践」という事例が取り上げられている。具体的には、「漢字カルタ作り」「ことわざ作り」「自己紹介」「電話番号語呂合わせ」「交通標語カレンダー作り」の五例である。
 高森は、これらのミニ単元を取り上げた理由として、「これが大単元的作文計画ではほとんどとり扱われないものである反面、子どもたちにはきわめて好まれているものであり、また文意識や言語感覚をみがくのに適しており、したがって文章への抵抗感を減少させるのに役立つと考えられているからである」と述べている。
 これらの実践の指導者は、橋見千恵子、伊藤幸子の二名である。高森は、後者の伊藤が、これらのミニ単元の性格として実践資料の中で述べている次のような言葉を引用している。

・楽しんで書く子をつくる。
・だれもが書ける短時間の学習内容である。
・印刷して全員に持たすことのできる手軽なものである。
・学年の指導目標などにはこだわらない。
・子ども各人の満足感、成就感を大切にする。(一九三〜一九四頁)

 ミニ単元による作文指導の特色を端的に捉えたものとして注目させられる。
 これらの事例のうち、例えば「ことわざ作り」では次のような自作のことわざが作られている。

○やせたい人はよく食べよ
 やせたくて食べないと体をこわしてしまう。だからよく食べ、よく運動するほどやせられる。
○親切も過ぎれば嫌われる
 親切もやりすぎるとおせっかいになり、きらわれる。なにごとも度をすぎるなという意味。

 また、「交通標語カレンダー作り」では、次のようなものが作られている。

1日 ・一時停止 やらなきゃだめだ 事故のもと
2日 ・にくい事故 おこしてならない 正しい歩行
3日 ・交通事故 見知らぬ世界 死の世界
7日 ・せなかには目がない 見えない 危険があるよ

 高森は、こうした実践が国語の授業の中に取り入れられて行われていることも確認している。そして、同時に、こうした実践を国語科作文の中に取り入れるには、「人間的なゆとりのある、授業中の変化に即応しうる、創造的な過程としての授業」でなければ果たせないと述べている。
 高森のこの指摘を国語科作文授業づくりへの課題として受け止めていかなければならない。

はじめに
序説 言語生活的作文の指導の特色
第一章 特定学校行事に関連する言語生活的作文の指導
 第一例 「日光移動教室」の実践—必要に従う文—
  一 考察の意図と資料の概要
  二 実践内容の分析
   1 「しおり」の自主的な作成
   2 「しおり」への自由な書き込み
   3 行事の進行に合わせた持続的な記入
   4 多様な表現法
   5 多様な作文活動
  三 実践の特色
 第二例 壁新聞コンクールの実践—作文行事の典型—
  一 考察の意図と資料の概要
  二 実践内容の分析
   1 「やる気」を引き出す全校行事
   2 新聞づくりの経験の蓄積と継続
   3 目を地域や社会へと開く題材さがし
   4 作文活動における自立性の獲得
   5 表現の楽しみの体験
  三 実践の特色
第二章 特定時期における言語生活的作文の指導
 第一例 年末年始時作文の実践—社会生活に機能する文—
  一 考察の意図と資料の概要
  二 実践内容の分析
   1 提案資料作りの位置
   2 クリスマス・メッセージの表現意識
   3 練習年賀状における作ることと書くこと
   4 実物年賀状における作ることと書くこと
   5 カードと年賀状におけるイラストの位置
  三 実践の特色
 第二例 卒業時作文の実践—小学校作文の到達点—
  一 考察の意図と資料の概要
  二 実践内容の分析
   1 謝恩会台本の作成と「感謝の言葉」の編集
   2 「よびかけ」の作成と感動体験
   3 手紙を書く機会とその効果
   4 一こと集における効果的表現
   5 「生いたちの記」作成の姿勢
  三 実践の特色
 第三例 入学・進級時作文の実践—中学作文の出発点—
  一 考察の意図と資料の概要
  二 実践内容の分析
   1 中学作文の出発としての旧担任への手紙
   2 計画表・決意表における生活的機能
   3 「一分間スピーチ」における学級経営的意図
   4 「一言感想」における表現の工夫
  三 実践の特色
第三章 作文生活経営のための言語生活的作文の指導
 第一例 読書関連作文の実践—読書生活に機能する文—
  一 考察の意図と資料の概要
  二 実践内容の分析
   1 「本のしおり」「読書表彰状」の作成
   2 「本の帯・カバー」の作成
   3 「読書の記録」「読書カード」の記入
   4 図書委員・係の活動
  三 実践の特色
 第二例 文芸的作文の実践—詩の形を利用した作文—
  一 考察の意図と資料の概要
  二 実践内容の分析
   1 一行詩(俳句)作り
   2 短形詩作り
   3 自由詩作り
  三 実践の特色
第四章 ミニ単元を中心にした言語生活的作文の計画と実践
 第一例 「ことばによるスケッチ12ヶ月」の実践—朝自習一五分間の作文計画—
  一 考察の意図と資料の概要
  二 実践内容の分析
   1 計画と形式のアイディア
   2 文集にみられる実施状況
   3 授業構成の問題
   4 外面描写と内面描写の指導
   5 表現練習の指導
  三 実践の特色
 第二例 言葉遊び的作文の実践—ミニ単元計画の展開—
  一 考察の意図と資料の概要
  二 実践内容の分析
   1 漢字カルタの作成
   2 ことわざ作り
   3 自己紹介の折句作り
   4 電話番号語路合わせ
   5 交通標語カレンダー作り
  三 実践の特色
終章 変化に応じる作文指導の要請
あとがき
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『作文教育論2 言語生活的作文の指導』 [書籍]


作文教育論〈2〉言語生活的作文の指導 (1984年)

作文教育論〈2〉言語生活的作文の指導 (1984年)

  • 作者: 高森 邦明
  • 出版社/メーカー: 文化書房博文社
  • 発売日: 1984/06
  • メディア: -


大内善一さんは『作文授業づくりの到達点と課題』(東京書籍)の「まえがき」において、「作文授業づくりに関してのケース・スタディ」の作業を行う必要性を述べています。『思考を鍛える作文授業づくり』(明治図書)でも行われた検討作業を踏まえて、少し時代をさかのぼり、昭和四十年代以降の実践を取り上げています。

さて、大内さんは『作文授業づくりの到達点と課題』「第Ⅳ章 短時間構成の小単元による作文授業づくり」第一節において「言語生活的作文」を取り上げています。高森邦明さんによって提唱された「言語生活的作文」は
『児童文学と国語教育』(一九七六年、鳩の森書房)、『あらゆる機会をとらえる作文指導』(一九八〇年二月、明治図書)などの論考を経て、「次の三書に余すところなく述べられている」と大内さんは紹介しています。

(1)高森邦明著『作文教育論2 言語生活的作文の指導』一九八四年六月 文化書房博文社
(2)高森邦明著『作文教育論3 言語生活的作文の実践研究』一九八四年十一月 文化書房博文社
(3)高森邦明著『言語生活的作文の指導シート』一九八八年十二月 学芸図書

さて、「言語生活的作文」の種類については、本書『作文教育論2 言語生活的作文の指導』に、次のようにまとめられています。

1 学級経営的作文——学級日誌、観察日誌、授業日誌、学級リレー日記、学級内諸係の案内・通知
2 学級文化的作文——学級新聞・壁新聞、標語・ポスター・カルタ、マンガ・イラスト、学級歌・応援歌、絵本・文集
3 学級指導的作文——学年初めの自己紹介文、級友を紹介する文、転校生をいじめる問題についての作文、さわがしい給食の時間について考えさせる文、「一日一枚作文」の実践の中での作文
4 臨場的作文——放送文、演説・あいさつの文
5 行事的作文——学究的行事における作文、学校的行事における作文
6 生活文化的作文——児童詩、俳句・短歌、川柳・折句その他の言葉遊び

これらの項目を見ても分かる通り、「言語生活的作文」は「狭い教科主義的な考え方を打破」して「作文単元にこだわらないで、言語生活的なあらゆる機会をとらえて書かせること」を促進させることを指導の条件にしています。しかし、大内さんは「これらの種類と指導の条件とは、そのかなりの部分が国語科作文の授業づくりにおいても生かしていける」と指摘しています。「言語生活的作文」に対する、このような大内さんのとらえ方は、『新しい作文授業 コピー作文がおもしろい』(学事出版)などに代表される、「遊び・空想・創造的要素を備えた文章を書かせるための教材」(『思考を鍛える作文授業づくり』)に影響を与えたと言えそうです。

なお、「『言語生活的作文の指導』に関する意義と考察点については、提唱者である高森自身が研究者としての立場から綿密に行っている」ため、大内さんは「国語科作文授業づくりとしての意義と問題点を考察するという方法」ではなく、「作文授業づくりに生かせるもの」を取り出すのみに留めています。そこで、以下、本書に関連して大内さんが考察した「作文授業づくりに生かせるもの」を引用して、まとめにしておきます。

    (1)「多様な表現形式」による「書く楽しみの開発」
 先に掲げた文献(1)『作文教育論2 言語生活的作文の指導』の中に「学級新聞『森の仲間』の実践」についての分析・考察が紹介されている。対象となった「学級新聞『森の仲間』」は、五年生の学級において発行された一、二学期分合計一五二号である。
 高森が行った実践内容の分析の五番目に「多様な表現形式を試みることによる書く楽しみの開発」という点が取り上げられている。この「学級新聞」には、教師の方針として「自由に書くことができる場を持たせる」ということが掲げられている。高森は、その中に「感想を述べたり、笑い話やクイズ、マンガなど、楽しみを主とした内容を表現したりしているところ」があると指摘している。
 「クイズ」については、次のようなものが紹介されている。

・Aさんがかき氷を食べすぎました。そしたら、Aさんは、もう何何と言いました。何と言ったのでしょう。
・スルメが海へ行き、ずっと体をやいていました。スルメはなんと言ったでしょう。(二二四頁)

 このような「クイズ」や「マンガ」などの表現について、高森は、次のように述べている。

 これらについては、「ほっておけばこんな下劣なものになってしまう」とみるか、「かれらの好みにまかせればこんなにものびのびと書く」とみるか、それぞれの立場によって違ってくるだろうが、私たちは、その後者を支持しなくてはならない。確かに、クイズやマンガは、模倣をまぬかれている例は少なく、内容も高いと思われるものはないかもしれないが、表現しようとした姿勢には、他人の目を強く意識したものが多いことによって分かるように、自立性、責任性を志向した要素が想像される。これは、この種の表現を通して養われる最も注目すべき点でなくてはならない。というのは、楽しく、喜んでもらえるものを書こうとすれば、どうしてもそれがどう受け取られるかを気にしなくてはならないからである。(二二四頁)

 高森の指摘にあるように、これらの多様で自由な表現形式の中から子供の「自立性が育ち、それが創造性を養う」ということは十分にうなづけるところである。
 この他にも、高森は、文献(2)の『作文教育論3 言語生活的作文の実践研究』の中で、多くの実践事例の中から子供たちのさまざまな表現様式による「書く楽しみの開発」事例を取り上げている。
 例えば、小学校六年生の「『日光移動教室』の実践」に出てくる「しおりの作成」の中で「落書き帳的なしおり」に出現している「漫画や地図のイラスト、樹木、森林などのスケッチ」の効用に言及している。
 なお、高森は、最も正統的な「日記、感想文、体験記、見学記」などから「メモ、落書き、大書」にいたるまでの多様な「作文活動」を、子供が本来もっている自由闊達な表現を象徴するものとして取り出している。
 こうした子供の自由な表現活動は、すでに今日の作文授業にもかなり取り入れられるようになっているが、その効用を改めて認識しておく必要があろう。「多様な表現形式」への着眼は、「言語生活的作文」の最大の特色であり、国語科作文授業づくりにも適用できる注目すべき成果である。

はじめに
序説 言語生活的作文への着目と体系化の課題
 一 本稿の意図と言語生活的作文への着目
 二 体系化の課題
第一章 現代作文指導の特色
 一 学習指導要領にみられる作文指導の特色
  1 国語指導の領域区分にみられる作文の位置
  2 作文指導への要求
  3 作文指導の種類
 二 今日の作文指導の課題
  1 昭和五十二年版学習指導要領以後の動向
  2 「作文の三本立てプラン」の実践研究
  3 「学習作文」の実践研究
  4 「短作文」の実践研究
 三 関連的指導における作文指導
  1 関連的指導の根拠と形態
  2 関連的指導の実践例にみられる作文指導の問題
  3 関連的指導の授業例にみられる作文指導の問題
第二章 言語生活的作文の性格
 一 子どもの書く活動
  1 子どもの書く活動の理解
  2 作文の授業での書く活動
  3 作文以外の国語の授業、その他の教科での書く活動
  4 「ゆとりの時間」その他の学校生活での書く活動
  5 学校外の日常生活での書く活動
 二 言語生活的作文の指導に係わる先行研究
  1 言語生活的作文の範囲
  2 大村はま稿「中学校の作文指導法」
  3 信州大学教育学部付属長野小学校著『書くことの学習指導法の研究』
  4 高野柔蔵稿「教科書以外の指導の機会と方法」
  5 青木博著『集団作文法による学級指導』
  6 八木橋雄次郎稿「作文指導の機会と作文指導の教材」
  7 石川宏子著『中学生の作文教育』
  8 倉沢栄吉著『機会と場を生かす作文指導』
  9 平野彧著『新題材による作文指導』
  10 森久保安美著『作文指導の領域と方法』
  11 北村季夫稿「書く場を広げるには、どうすればよいか」
 三 言語生活的作文の特色
  1 機会をとらえる作文
  2 生活の必要に立った作文
  3 生活を豊かにする作文
  4 応用的発展的作文
  5 自律的自発的作文
 四 言語生活的作文の指導の教育的意義と目標
  1 言語生活的作文と学習指導要領の態度目標
  2 自然的母国語教育としての言語生活的作文
  3 全人間的国語教育としての言語生活的作文
  4 個性的表現者をめざす言語生活的作文
第三章 言語生活的作文の種類と指導の条件
 一 言語生活的作文の種類
  1 学級経営的作文
  2 学級文化的作文
  3 学級指導的作文
  4 臨場的作文
  5 行事的作文
  6 生活文化的作文
 二 言語生活的作文の指導の条件
  1 作文の授業観の改造
  2 作文観の改造
  3 作文的状況の形成
  4 作文的環境の整備
  5 作文資材の利用
第四章 作文行事予定表の作成研究
 一 今日の作文指導における題材表・題材暦
 二 教授細目にみられる題材提示法
 三 題材表・題材暦に関する文献
  1 久芳龍蔵著『綴り方教授の研究』における綴り方教授細目
  2 峰地光重著『小学校綴方教授細目』
  3 東苑書房版『文材暦作製・使用の具体的研究』
 四 作文行事予定表
第五章 言語生活的作文の指導の実践具体例—学級新聞「森の仲間」の実践の場合—
 一 考察の意図と資料の概要
 二 実践内容の分析
  1 人間形成的効果の問題—作文人的性格の形成
  2 「あいさつ」欄にみられる書きなれの促進
  3 伝達記事におけるまとめ方の学習
  4 ニュース記事における取材の学習
  5 多様な表現形式を試みることによる書く楽しみの開発
 三 実践の特色
終章 まとめと今後の課題
参考文献
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『作文能力の分析と指導』 [書籍]

著者:八島詮
出版社:児童憲章愛の会
発売日:1969年4月1日

大内善一さんは『作文授業づくりの到達点と課題』(東京書籍)の「まえがき」において、「作文授業づくりに関してのケース・スタディ」の作業を行う必要性を述べています。『思考を鍛える作文授業づくり』(明治図書)でも行われた検討作業を踏まえて、少し時代をさかのぼり、昭和四十年代以降の実践を取り上げています。

さて、大内さんは『作文授業づくりの到達点と課題』「第Ⅲ章 アイディア題材・教材開発による作文授業づくり」第二節において「教材の開発による授業づくり」を取り上げています。ここでは「○○学習」「○○作文」のような特定の名称があるわけではありません。本書の著者は「一九六〇年代に福島県小学校国語研究会長を務めた八島詮という人物」ですが、全国的に知られているわけではありません。そのため、「この本は今日一般には手に入りにくいものとなってい」ます。

それにもかかわらず、大内さんは本書の価値を「作文の指導教材として、教育現場に『質量ともに生気と具体を与え』る『補助教材』を、小学校の各学年にわたって総計一六二編も開発して提示した」点に見出しています。そして、「実践者自身の手になる作文教材の開発事例は、芦田恵之助の事例や大村はまの『中学作文』(一九六二年三月 筑摩書房)を例外としてほとんど見出し得ない」とまで評価しています。

その裏付けとして、大内さんは全学年の教材を分析し、一覧表にしています。その結果、「口頭作文教材」「参考教材」「範文教材」「視写教材」「練習学習教材」「材料喚起の教材」「表現技法教材」「課題作文教材」「批正教材」「文話教材」という十種類に分類しました。「このように多彩な教材が開発されるているのは、作文学習過程の多様な局面に応じようとする姿勢のあらわれであり、大変好ましい傾向」と言います。

この点も含めて、大内さんは最終的に次の意義を挙げています。

(1)学年・学期ごとの単元の枠組みの中で、一単元を平均三〜四時間で組み立てて、原則的に一時間に一教材を配当している点など、児童の学習負担・興味関心の持続度、また作文学習を円滑に進める上から大変好ましい。
(2)開発されている教材の種類が十種類ほどあり、作文学習過程の多様な局面に応じようとする姿勢が顕著にあらわれていて望ましい。
(3)一つ一つの教材が手頃な分量でコンパクトにまとめられていて、内容精選の面からも望ましいことである。
(4)教材の一部が〈文話=文章講話〉としての機能を帯びているものが少なからず存在するのは、教材の運用性という点から見ても好ましいことである。
(5)ほとんどの教材が〈指導言+指導作文(範文・参考文・練習文など)+指導言〉という型として構成されていて、作文の学習活動の〈手引き〉としての機能を有している。したがって、教材それ自体が一時間の展開案としての役割を果たしている。今後の作文教材開発にも十分に参考になる。

さらに、次の問題点も指摘しています。

(1)「作文の基礎能力」の体系的解明と「技能の系統的指導」という神話から解き放されていない。順序が逆なのである。八島が行ったように、眼前の子供の文章表現のつまずきを掘り起こし、そのつまずきへの対応として押さえるべき作文技能と、指導の手立てとしての教材の開発を行っていくことでよかったのである。結果として、それが八島詮の言う「実証的な体系」となるのである。
(2)作文教材の開発も、やはり従来の取材・構想・記述・推敲といった定式的な文章制作過程に沿って行われている。作文学習過程を中心に開発していくべきであった。歴史的な限界と言うべきであろう。

「歴史的な限界」とあることからも、当時としては仕方なかった点がうかがえます。「作文の基礎能力」「技能の系統的指導」「文章制作過程」といった呪縛を解き放った上で、いかに今日の作文授業づくりに活かせるものを発掘していくか。大先輩の実践者が残した膨大な遺産を、なんとか現代に甦らせたいものです。

はじめに
 1 つづる心理
 2 つづるよろこび
 3 すばらしい授業
第一章 作文の基礎能力(体系をふまえた技能分析)
 第一節 作文教育の課題
  一 作文指導の現状
   1 国語教育のなかの作文指導
    まま子扱いの作文
    読解力と作文力
   2 喜ばれない作文学習
    題材がない
    書くことへの抵抗
    表現意欲の沈潜
    書く力の貧困
  二 作文指導のなやみ
   1 教師の文感覚の甘さ
    語感を鋭く
    児童文の見方
   2 指導観点の弱さ
    指導観点の体系
    学年ごとの指導観点
   3 作品処理の不てぎわ
    作品の処理と評価
    合理的な処理
  三 人間性の回復
   1 文章表現における思考訓練
    内言活動での思考
    構想から推考への思考
   2 自己紹介を活発にする
    生活の自覚
    感情を太らせる
   3 生活態度をち密にする
    細かに見る目
    己を省みる機会
 第二節 基礎指導の必要
  一 技能以前のもの
   1 生活の根を太らせる
    感動を育てる
    心情を深くする
   2 見る目を開かせる
    感じとる力
    具体的に見る目
  二 作文能力の基礎
   1 書く技能の訓練
    技能の系列
    技能の取り立て指導
   2 読解指導と作文指導
    読解での作文意図
    教科以外の作文意図
  三 基礎能力の分析
   1 作文能力のおさえ
    「よい作文」の観点
    作文学習の形態
    補助資料の活用
   2 作文技能の系列
    作文の学年主題
    作文能力要素表
 第三節 取材における基礎能力
  1 注意ぶかく見る力
   (1)そのまま見る
   (2)ていねいに見る
   (3)こまかに見る
   (4)区分して見る
   (5)比較して見る
   (6)だいじさを見る
  2 すなおに感じとる力
   (1)おもしろいことにひかれる
   (2)めずらしいものがわかる
   (3)すききらいが言える
   (4)だいじなことに気づく
   (5)感じの度合いがわかる
   (6)題材の価値がわかる
  3 経験を定着する力
   (1)したことを思い出す
   (2)した順序に思い出す
   (3)印象的に思い出す
   (4)書きたいものを見つける
   (5)よい材料を見わける
   (6)ねうちのある材料を選ぶ
 第四節 構想における基礎能力
  1 中心をすえる力
   (1)書きたいことを話す
   (2)書きたいことを決める
   (3)書くことをはっきりさせる
   (4)中心をおさえて考える
   (5)主題をしぼって考える
   (6)主題に合わせて配材する
  2 順序をきめる力
   (1)絵話をする
   (2)書く順序がわかる
   (3)書く順序をきめる
   (4)書く範囲をきめる
   (5)書く条件を考える
   (6)経験の構成を考える
  3 調和を考える力
   (1)やったことを話す
   (2)書くことを発表する
   (3)いっぱい書くところをきめる
   (4)書く項目をたしかめる
   (5)気持ちに合わせて考える
   (6)文章の首尾を考える
 第五節 記述における基礎能力
  1 くわしく書く力
   (1)絵を見て書く
   (2)順序よく書く
   (3)ようすを写して書く
   (4)中心をくわしく書く
   (5)見せるように書く
   (6)効果をねらって書く
  2 すじを通して書く力
   (1)正しい文で書く
   (2)基本文で書く
   (3)ぬかさないで書く
   (4)ねらいを通して書く
   (5)まとまりをつけて書く
   (6)呼応を強めて書く
  3 目的に応じて書く力
   (1)遊んだことを書く(視写)
   (2)できごとの文を書く(聴写)
   (3)手紙文やようすの文を書く(相手)
   (4)観察文や見学文を書く(精粗)
   (5)詩や感想文を書く(省略)
   (6)報告文や意見文を書く(要約)
  4 ことばを選んで書く力
   (1)ものを見て書く
   (2)よくわかることばで書く
   (3)はっきりさせて書く
   (4)修飾を考えて書く
   (5)ぴったり語で書く
   (6)素材を生かして使う
  5 気持ちに合わせて書く力
   (1)おもしろいところを書く
   (2)とくいなところを書く
   (3)思ったことも書く
   (4)感じたように書く
   (5)感動を生かして書く
   (6)自分を出して書く
 第六節 推考における基礎能力
  1 誤りを見つける力
   (1)書いたら読みなおす
   (2)まちがいをなおす
   (3)表記を正しくする
   (4)合わないことばをなおす
   (5)修飾をぴったりさせる
   (6)表現の乱れを正す
  2 ねらいに合わせる力
   (1)書いたのを読んできかせる
   (2)わかるようになおす
   (3)足りないところをたす
   (4)よけいなところをけずる
   (5)すじが通るようになおす
   (6)文章の照応を正しくする
  3 文章をみがく力
   (1)ひとの文章を読む
   (2)ひとの文章をほめる
   (3)すきなところを見つける
   (4)うまいことばがわかる
   (5)むだのない文章にする
   (6)効果のある表現にする
第二章 作文能力の指導(体系をふまえた実践指導)
 第一節 作文の指導過程
  一 指導過程の新しい試み
   基本の指導過程
  二 指導過程と指導の場
   単元作文
   読解作文と行事作文
  三 指導過程と能力要素
   練習学習の重視
   作文能力のおさえ
 第二節 第一学年の指導の実際
  一 指導の観点
   概観
   文になれる
   文章になれる
   話題で書く
  二 思い出すままに話させる指導
   おはなし
   なかよし
   えをみてはなす
   えんそくのはなし
  三 経験の順序に話させる指導
   だれがいますか
   えのおはなし
   はなび
   おつかい
  四 まちがわないで書かせる指導
   ぶんがわかる
   ぶんをかく
   つづけてかく
   きょうしつのもの
   くらべよう
   ようすをかく
   おまつりのようす
  五 遊んだことを書かせる指導
   おもいだしてかく
   かくれんぼ
   おもしろいところ
   おはなしのことば
   くわしく書く
   ひとつだけ
  六 文章を読ませる指導
   てんとまる
   わかるぶんしょう
   よんでみつける
 第三節 第二学年の指導の実際
  一 指導の観点
   概観
   はっきり書く
   長くつづける
   できごとをつかむ
  二 書きやすく思い出すための指導
   きょうしつのなか
   うごくもの
   めずらしいもの
   おかあさんのしごと
  三 書くことをきめる指導
   だるまはこび
   書くじゅんじょ
   おみまい
  四 順序をたどって書く指導
   おつかい
   三つのねがい
   木のぼり
   日よう日のあそび
  五 わかるように書く指導
   ようすがわかる
   くわしくすることば
   ようすを見て書く
   えんそくの朝
   とくいなところ
   お話も書く
   文のかたち
  六 まちがいを見つける指導
   ぶたのかぜひき
   みじかくきる
   わかりにくい文
   文しょうをなおす
 第四節 第三学年の指導の実際
  一 指導の観点
   概観
   くわしく述べる
   ようすを写す
   説明ができる
  二 こまかに見ることの指導
   見ながら書く
   色や形を書く
   見てから書く
   聞いたままを書く
   聞いてから書く
   たのしい日記
   日記をつづけよう
  三 書くことを組みたてる指導
   ぼうえんきょう
   書くじゅんじょ
   きめたじゅんじょ
   できごとを書く
   書くまえにくみたてる
   くみたてを見て書く
   文しょうを読みなおす
  四 ようすをくわしく書く指導
   工場の見学
   見学して書きとる
   見学の文しょう
   くわしい文しょう
   書きなおした作文
   思ったことを書く
   くわしい文を書く
  五 はっきりさせてから書く
   かんさつの文
   花のかんさつ
   友だちへの手紙
   ようじをはっきり
   なかよし新聞
   ニュースを書く
   見出しを考える
   お話のリレー
  六 たりないところを書きたす指導
   観点による推考
   郵便局の見学
   勉強してわかったこと
 第五節 第四学年の指導の実際
  一 指導の観点
   概観
   中心をくだく
   特長をつかむ
   気持ちを述べる
  二 だいじなことがわかる指導
   動いているもの
   動くものを見つける
   聞こえてくるもの
   春らしいもの
   物のとくちょう
  三 段落に組みたてる指導
   ボール投げ
   じゅんじょのことば
   だんらくの書き出し
   メモを書く
   メモと組みたて表
   見学の記録文
  四 中心をくわしく書く指導
   中心をはっきりと
   中心をくわしく
   くわしいしょう
   学校園のせつめい
   くわしくと、かんたんと
   家の人のせつめい
   すきなこと、きらいなこと
  五 感じたことも書く指導
   感じのはいった文
   感じの文のいろいろ
   読んで感じたこと
   気持ちを表した詩
   気持ちの動きを書く
   とくちょうを見て書く
  六 すっきりした文になおす指導
   人をまねく手紙
   おみまいの手紙
   手紙のことばづかい
 第六節 第五学年の指導の実際
  一 指導の観点
   概観
   ぴったり表わす
   ねらいをすえる
   感想を述べる
  二 よい材料を見つける指導
   ねうちのある題材
   ねらいに合う材料
   材料を生かす
   メモのとり方
   見学文を読む
  三 主題をはっきりさせる指導
   読書の記録
   読書の感想
   相手の気持ち
   書くねらいを考える
  四 すじを通して書く指導
   だんらくに分ける
   小見出しのくふう
   小見出しをつける
   書き出しと結び
   書き出しと結びのくふう
  五 ことばを選んで書く指導
   見えるように書く
   ようすのことば
   研究の記録
   研究記録の書き方
   ぴったりしたことば
   短くはっきり書く
   か条書きのくふう
   ことばを省く
   詩が生まれる
   短いことばで写す
   リズムにのったことば
  六 修飾をぎんみする指導
   文章のすいこう
   すいこうのし方
   よく合うことば
   むだなことば
 第七節 第六学年の指導の実際
  一 指導の観点
   概観
   文をひきしめる
   目的に合わせる
   意見を述べる
  二 材料のねうちがわかる指導
   小さな発見
   題材のねうち
   気持ちをつかむ
   気持ちに合わせる
  三 文章の統一を考える指導
   書き出しのちがい
   説明文の第一段落
   段落の組みたて
   説明文の構想
   ねらいに合わせる
   事実にもとづく
   理由をあげて書く
  四 呼応を強めて書く指導
   経験のなかの感想
   感想の理由も書く
   文の終わりのことば
   見せるようなことば
   気持ちのことば
   説明のことば
   感動をそのまま書く
   ぴったりした表現
   効果的な表現
  五 材料を生かして使う指導
   メモの整理をする
   小見出しを生かす
   研究メモを生かす
   資料を生かして書く
   要約やぬき書き
  六 表現の効果を高める指導
   目的に合わせた推考
   首尾を一貫させる推考
   報告文の推考
   卒業文集を作る
あとがき
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『新題材による作文指導』 [書籍]


新題材による作文指導 (1977年)

新題材による作文指導 (1977年)

  • 作者: 平野 〓@4DA2
  • 出版社/メーカー: 明治図書出版
  • 発売日: 1977/04
  • メディア: -


大内善一さんは『作文授業づくりの到達点と課題』(東京書籍)の「まえがき」において、「作文授業づくりに関してのケース・スタディ」の作業を行う必要性を述べています。『思考を鍛える作文授業づくり』(明治図書)でも行われた検討作業を踏まえて、少し時代をさかのぼり、昭和四十年代以降の実践を取り上げています。

さて、大内さんは『作文授業づくりの到達点と課題』「第Ⅲ章 アイディア題材・教材開発による作文授業づくり」第一節において「新題材による作文指導」を取り上げています。これは一九七七年版学習指導要領で強調された「文章による表現力を高めること」に対応して、平野彧さんによって提唱されました。大内さんは「子どもたちが喜んですぐ書きたくなるような題材、それでいて表現力を身につけさせることが十分できるような題材の開発」に着目している点に独自性を見出しています。そして、平野さんによって提案されたアイディア題材の一つ一つについて分析を加えています。主な分析としては、次の「題材の機能」ごとに分類・整理しています。

(1)〈ゲーム的要素〉の題材
(2)〈追究的要素〉の題材
(3)〈空想・創造的要素〉の題材

(1)の例としては、「ぼくのPR作戦」「わたしの広告つくり」が挙げられています。これらの題材に対して、「従来の生活指導的要素に加えて〈ゲーム的要素〉を加味して「子どもたちが喜んですぐ書きたくなるような」題材の開発に努めたと評価しています。

(2)の例としては、「父母から聞いた話をもとにして」「村のむかし話を発展的に」が挙げられています。「取材の対象を家の中から家の外に」という具合に、「無理のない形」で〈追究的要素〉が取り入れられています。

(3)の例としては、「ぼくのゆめ、わたしの夢」「お話のあとをつづけて」「結びの文に合わせて」「話題の人、○○さんをたずねて」が挙げられています。それぞれ、「願望、理由のあとに、願望が実現した時の具体的な場面を描かせる」「教師が『ある程度の筋や枠』を用意しておいて書かせる」「あらかじめ『結びの文』を与えておいて、これに合わせて自分の経験や想像を交えて、お話の筋を作らせる」「架空のインタビューをして作文を書く」など、〈空想・想像的要素〉を含んだ題材が工夫されています。

そして、大内さんは最終的に次の意義を挙げています。

(1)どのようなジャンルの作文を書かせる場合にも、子供たちが無理なく楽しんで書いていけるような条件(例えば、書き出しや結びを与えることなど)がよく整えられて提示されている。
(2)同一系統の題材を易から難へと変化発展させながら、多様なバリエーションで設定している。つまり、子供の思考の実態に即した形で題材が設定されているのである。
(3)国語科作文指導(同時に、学級指導・生活指導面も考慮されている)としての教科内容(あるいは教育内容)が明確に押さえられた上で題材が開発されている。
(4)題材を生かす手立てがそれぞれによく工夫された上で、これと一体に題材が開発されている。
(5)それまでの生活指導と密着した題材に加えて、〈ゲーム的要素〉や〈空想・想像的要素〉を含んだ題材が数多く開発されている。

さらに、次の問題点も指摘しています。

(1)当時の状況からすれば止むを得ないが、やや文章としての機能が不明な文(生活文的なジャンルの作文)を書かせようとしている題材が若干見られる。
(2)〈追究的要素〉を含んだ題材がまだ必ずしも十分には開発されていなかった。アイディア題材開発の今後の課題である。

今から30年以上も前の実践のため、時代的な制約はあったとしても、「今日のアイディア題材による作文授業づくりに先鞭をつけたものとして特筆に値する」という大内さんの評価にも頷けます。

はじめに
第一章 まず、さり気なく書かせよう
 1 作文指導のスタート
 2 ぼくのPR作戦
 3 正しい文を書かせるために
 4 書き慣れさせるために
第二章 正しくとらえて、くわしく書かせよう
 1 紙をまるめて
 2 ぼくのドッキリ作文
 3 五十円工作の案内
第三章 心のとびらを開かせよう
 1 ほんとうのことが話し合える学級を
 2 わたしのはずかしかった物語
 3 このごろ気になること
第四章 実生活に役立つことを書かせよう
 1 授業参観に来てください
 2 ぼくのミニ・ガイド
 3 わたしの広告つくり
第五章 短い作文も書かせよう
 1 短作文で構想指導を
 2 ぼくの、わたしのニュース
 3 本の帯、しおり作り
第六章 調べる作文も書かせよう
 1 父母から聞いた話をもとにして
 2 村のむかし話を発展的に
 3 郷土の人物と郷土めぐり
第七章 未経験のこと、想像したことも書かせよう
 1 たのしい絵ばなし
 2 ぼくのゆめ、わたしの夢
 3 お話のあとをつづけて
 4 実生活をもとにしたつづき話
 5 結びの文に合わせて
 6 絵地図によるお話つくり
 7 ○月○日のぼく
 8 話題の人、○○さんをたずねて
第八章 たのしむために書かせよう
 1 ぼくをとりまく○十人のひとたち
 2 わたしが書いた小さな本
 3 ぼくの紙上実況放送
 4 ミニミニ雑誌の発行
 5 わたしは○○です
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