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『授業 俳句を読む、俳句を作る』 [書籍]


授業 俳句を読む、俳句を作る

授業 俳句を読む、俳句を作る

  • 作者: 青木 幹勇
  • 出版社/メーカー: 太郎次郎社
  • 発売日: 1992/06
  • メディア: 単行本


『第三の書く』(国土社)において「物語教材」から「短歌、俳句を読む」提案を行った青木幹勇さんが、「俳句」に特化して書いた本です。「はじめに」では、次のように述べられています。

 詩歌、なかんずく、わたしがもっとも関心を寄せてきたのが俳句でした。戦中・戦後と作句をつづけ、他方、俳句の指導にも当たってきました。しかし満足のいく授業は、一度もありません。
 ところが、ここ数年、わたしは、全国各地の子どもたちが作る子ども俳句に目を覚まされました。そこでまず、これまでの俳句教材を、新鮮にはねている子ども俳句に取り替えました。
 作句についても、伝統の写生主義にこだわらず、子規も許容し、奨めている想像による味つけの表現法を工夫してみました。
 そこで、なんと、作句の入門は、物語を手がかりにし、ここから俳句を発想するというのです。その教材として最初に取り上げたのが、子どもたちに好んで読まれる「ごんぎつね」です。
 これまでわたしの行ってきた、読む、作るの俳句指導とは大きくちがっていますが、多くの子どもに出会って重ねてきた実験的な授業の成果、その手応えは十分です。

「物語を手がかりにし、ここから俳句を発想する」という青木さんの授業の実際は、本文中に詳しく描かれています。その中から、導入にあたる「欠落を埋めて一句にまとめる」の部分を見てみましょう。

(1)そろそろ作れそうだと思わせるところまで誘ってくることができたら、成功というところです。しかし、まだ依然として五里霧中の子どももかなりいるでしょう。そこで、次のような、クイズばりの作句遊びをしてみます。
(2)      (     )
          お城にひびく
          もずの声
 「上五のところへ入れることばを考えます。物語を読み返すとみつかるでしょう。この句をノートに写し、場面を想像して欠けているところのことばをみつけるのです。ノートに書き入れた人は、何人でも黒板に書いてください」
(3)意外に早く、「きんきんと」「雨はれて」「青空に」などの語を、見つけて黒板に書き入れる子どもが出てきます。
(4)はじめの五ができると、
          きのうくり
         (       )
          両の手に
 中の七音を欠落させた句を出してみます。これは、物語の3の場面ですが、「きのうくり」とありますから、ここを埋めることはさほどむずかしくはありません。
  きょうはまつたけ
  きょうもまつたけ
  きょうもまたくり
 など、おもしろくはいりました。
(5)さて、次はおしまいの五音節です。
          月の道
          兵十加助の
         (     )
 この句を提出しました。三回目となると子どもたちもなれてきて、句についての注釈などはいりません。物語のなかのシーンと句を結んで想像し、
  かげぼうし
  立ち話
  話し合い
  帰り道
 などの語が見つけ出されます。
 ここまでで作句のための助走ができたわけです。そこでいよいよ、自力でハードルをこえてみようという、句作の本番です。
 句を作るといっても、ここまでのところでは、五・七・五の韻律、つまり定型についても、とくにとりあげて指導することはしていません。日本の子どもであれば、五、六年生にもなると、このような表現形式は、いつのまにかだいたい身につけているといえるでしょう。子ども俳句では、多少の字余りや、寸足らず、さらに、無季の句でも、許容していきます。そういう形式よりも、まずは、オリジナルな着眼、発想、詩的なイメージを書いてみることをすすめて、形にはこだわらなくてもいいことにします。
 欠落(伏せ字)を埋めて一句にまとめる練習は、この場合だけでなく、ときどき試みてみるとおもしろいと思います。とりあげる句は、子ども俳句集から選んでもよし、子どもの理解のとどく、現代作家のもの、あるいは古典句をとりあげてみてもいいでしょう。自分でことばを斡旋してみると、原句の秀れていることがよくわかります。これも作句学習の一つです。

ところで、この青木さんの授業に触発されて、私が10年ほど前から、こだわっている実践があります。以下に関連文献をリストアップしてみます。

文献1 佐内信之「俳句のアニマシオン」(「学習ゲーム研究会」機関誌『m-age』第2号、1999年3月31日)
文献2 佐内信之「俳句のアニマシオン」『授業づくりネットワーク』2000年5月号)
文献3「俳句で遊ぼう」(M・M・サルト著『読書へのアニマシオン 75の作戦』柏書房)
文献4 佐内信之「俳句クイズで遊ぼう」(上條晴夫編著『ワークショップ型授業で国語が変わる 小学校』図書文化社)
文献5 有元秀文「俳句を楽しみながら、言語感覚を磨き創造性を育てる」(『子どもが必ず本好きになる16の方法・実践アニマシオン』合同出版)
文献6 穴見嘉秀「アニマシオンに活用される『遊び』の要素のある授業はこれだ!」(『授業づくりネットワーク』2006年8月号)
文献7 佐内信之「ワークショップ型授業の典型とは 遊び・ゲーム的要素の活動を中心に〜試行錯誤」を促す俳句遊び〜」(『授業づくりネットワーク』2006年11月号)
文献8 佐内信之「表現につながる俳句遊び〜俳句クイズからパズル、そして創作へ〜」(『授業づくりネットワーク』2008年8月号)

文献5の有元さんは「どんな俳句が適当か?」について、「子どもがつくった俳句ではやりません。一流の俳句で言葉の美しさに触れることが目的ですから」と述べています。

文献6の穴見さんは「俳句のアニマシオンでも、正解ができたかどうか評価するのではなく、自由に言葉をいれて楽しくすごし、そして作者の選んだ言葉に感心する、そういう『遊び』なのだ」と述べています。

この二つの批判に応えるためには、読書へのアニマシオンではなく、青木実践の追試として「俳句遊び」をとらえ直した方がよいのかもしれません。先に引用した青木さんの「クイズばりの作句遊び」ならば、穴見さんの批判に正対できるでしょう。また、有元さんが退ける「子ども俳句」についても、青木さんなら積極的に取り上げようとするでしょう。

また、読書へのアニマシオンとして「俳句遊び」を実践しようとすると、俳句は「どれも最後の五文字の部分は書かずに抜かしておきます」という制限があります。この制約をクリアするためには、俳句のさまざまな場所を伏せ字にしている青木さんの実践は都合がよいです。

以上のような経緯を踏まえると、もともとは「俳句のアニマシオン」として出発した実践ですが、青木さんの「俳句遊び」として位置づけた方がよさそうに思えるのです

はじめに
Ⅰ 俳句は子どもの感性を鋭くする
 子ども俳句に開眼する
 やきたてのクッキーみたいな春の風
 自分にも作れそうだと思わせる
 俳句学習は片隅におかれている
 俳句のよさは伝わっていた
Ⅱ 俳句を読む
 抵抗感をもたせない
 子どもの作品で詩心をゆさぶる
 どのように句意を理解させていくか
  子どもの知っている俳句を聞く
  子ども俳句ブームについて話す
  子ども俳句を紹介する
  教材を書きうつさせる
  句意を考える
  音読してみる
  クイズ仕掛けで句を解釈する
  俳句を散文にしてみる
  俳句的表現の特徴に気づかせる
Ⅲ 俳句を作る
 なにを手がかりにして作句するか
  教師の作句経験が授業を豊かにする
  子どもの発語を敏感に受けとめる
  写生の句と、想像を交えた句
  読むことと書くことを一体化する
 物語を読んで俳句を作る
  なぜ、「ごんぎつね」を選んだか
  子どもの知っている俳句をたずねる
  「見て作る」と「読んで作る」
  物語俳句を提示する
  「ごんぎつね」の復習をする
  「ごんぎつね」から季語を見つける
  季語と場面をつなぐ
  欠落を埋めて一句にまとめる
  作句にとりかかる
  作品を発表する
  どんな作品ができたか
  子どもの作句感想から
 俳句学習でことばをみがく
 俳句学習の世界を広げる
Ⅳ 授業記録・俳句を作る
 知っている俳句を発表する
 「見て作る」と「読んで作る」
 「ごんぎつね」の復習をする
 「ごんぎつね」から季語を見つける
 季語と場面をつなぐ
 欠落を埋めて一句にまとめる
 作句にとりかかる
 作品を発表する
 俳句づくりのすすめ
Ⅴ 子どもに学ぶ
 子どもにもらった「授業論」
 授業のなかの子どもの視点
  先生はこわい?
  教師の表情とは
  授業の楽しさとは
  時間を短く感じるとは
  遊びのような授業で、いつのまにか……
  教師のパワーとは
 俳句を生活に広げる
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