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ブラボー!ミルクコーヒーを作ろう [雑誌]

私が編集に関わっている学事出版の雑誌『授業づくりネットワーク』「あすの授業」コーナーの原稿を、私なりの視点で検討していきます。
※参考:佐内信之「新しい授業レポートの誕生 『あすの授業』を中心に」『授業づくりネットワーク』2007年3月号

『授業づくりネットワーク』2009年12月号
算数(小6)/堀多佳子 ブラボー!ミルクコーヒーを作ろう

「授業のへそ」を引用します。

 実際に牛乳とコーヒーを混ぜてミルクコーヒーを作り味わうことで、「割合を比に表すこと」「等しい比」について容易に理解することができる実践である。

算数の授業でミルクコーヒーが飲めるなんて、それだけでも楽しそうな実践です。子どもたちの喜ぶ様子が目に浮かびます。実際の活動の流れを見てみましょう。

(1)準備物を班に運ぶ。
(2)何杯ずつ入れるか相談してワークシートに記入する。
(3)記入した量を大きな紙コップで正確に量り取る。
(4)よく混ぜて個人用のコップに分け、味をみる。
(5)味の評価を記録する。
(6)相談し次の割合を決める。
(7)5回試したら相談して、ブラボーコーヒーを決める。

項目が(7)は少し多い気がします。私が「あすの授業」を書いたり読んだりした経験では、「5以内」に整理するのがよいと思っています。(拙稿「システム整理法とエピソード描写法」『授業づくりネットワーク』2009年8月号参照)

(1)の「準備物」は大切です。堀さんの原稿でも真っ先に次の「準備物(1グループ分)」が提示されています。

紙コップ大3つ(コーヒー用・牛乳用・量り取り用)
個人用の紙コップ(小)人数分
5mlの計量スプーン2つ
マドラー1本
ワークシート

(2)の「ワークシート」も必要です。堀さんは実物を示しています。ワークシートには、次のような欄があります。

□ □ □ □ □ □ □ □ □ □

この□にコーヒーは■・牛乳は×の印を記入します。「1回に混ぜる量はコーヒーと牛乳を合わせて10杯まで」というルールがあるので、□が10並んでいるのです。何をすればよいのかを視覚的に訴える、わかりやすいワークシートです。

(3)では「大きな紙コップ」を使います。

(4)では「マドラー」と「個人用のコップ」を使います。

(5)〜(7)で新しく使う物は無いようです。このあたりが整理できそうです。

先の活動の流れは「準備物」に着目すると、次の5つに整理できます。

(1)   「準備物」を運ぶ。
(2)   「ワークシート」に記入する。
(3)   「大きな紙コップ」で量る。
(4)(5)「マドラー」で混ぜて「個人用のコップ」に分け、味を評価する。
(6)(7)5回くりかえし、ブラボーコーヒーを決める。

なぜ、このようにシステムを整理する必要があるのでしょうか? それは、エピソードを描写すべきポイントを明らかにするためです。堀さんは(1)〜(3)までの手順は詳しく説明しています。(3)の描写も少し出てきます。しかし、(4)〜(7)の場面の描写は全く出てきません。(4)〜(7)で子どもが試行錯誤する場面こそ、この原稿で描写すべきなのではないでしょうか。「コーヒーが多すぎるよ」「牛乳あと1杯くらいじゃない」など、子どもたちがスプーンの「数」を手がかりに味を何度も評価する過程から、「割合」や「比」の学習が生まれるのではないでしょうか。

つまり、(1)〜(5)のシステムを簡潔に説明した後は、(6)(7)のエピソードを描写すべきではないかと思われます。そうすると、気になるのは「5回」という回数です。子どもたちが試行錯誤するのに「5回」という制限を与えることの是非です。

堀さんが参照した小野工さんの「比は味で」(『授業づくりネットワーク』2004年10月号)では、「20分間の時間をあげたが、各グループで10種類以上の味が試され」たそうです。回数ではなく、時間が制限されていたわけです。堀さんの「5回」は小野さんの約半分です。そうすると、時間は10分間くらいでしょうか? 原稿に時間は示されていないのですが、もし10分間だとすると、試行錯誤の時間としては短すぎるように思います。

実践記録における「システム」と「エピソード」、それぞれの記述量の配分を見ると、実際の授業における活動の位置づけもうかがえます。
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